異常なほど国民負担が重く、庶民が苦しむ国

──お金が余っている、というのは?

しなくていいことにお金を使って、必要なところに使っていないだけ。家計と一緒です。給料の額がたとえ減ったとしても、光熱費や家のローンを払った後の残ったお金で家計をやりくりするのは、どの家庭でもやっていること。そのために父親がスナック通いを減らしたり、母親が冬の新しいコートを諦めるじゃないですか。

明石市は「18歳までの医療費無料」、「第二子以降の保育料無料」、「中学校の給食費無料」「公共施設の遊び場無料」「おむつ定期便(満1歳まで)無料」という子育てに関する5つの無料化をしました。予算は34億円。市の年間総予算2000億円のうちのたった1.7%です。

世帯年収600万円強の共働き家庭に比率を当てはめると、月8500円程度。子供が大きくなって塾や習い事に行きたいと言ったら、親は頑張って月謝代を出すでしょう。時代や状況に応じてお金の使い道を変えるだけや。

まして国の予算は額の大きさが違うんだから、楽やん。金がないなんて宗教じみたフィクションに染まっているけど、「あろうがなかろうが、その中でやりくりせい」ということだと思うよ。その気が官僚にないだけ。

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──それはなぜでしょう?

官僚は国民に選ばれていない、ただ就職しただけの人たちです。だから組織防衛するのは当たり前なんです。組織の拡大と自分の保身が目的だから、過去にやってきたことを否定しない。前例主義の官僚制は肥大化するんです。

財源に余裕がある右肩上がりの時代であればいいけど、右肩下がりになった瞬間に計算が合わなくなる。そこでどうするかというと、財務省は増税し、厚生労働省は社会保険料を上乗せする。結果、国民負担増や。

つまり、日本という国は異常なほど国民負担が重く、庶民が苦しむ国なんです。「官僚主権から国民主権への転換」を早くから訴えていたのが、石井紘基さんでした。

取材・文/松山梢

『わが恩師 石井紘基が見破った官僚国家 日本の闇』
泉房穂
『わが恩師 石井紘基が見破った官僚国家 日本の闇』
2024年9月17日
1,045円(税込)円(税込)
新書判/256ページ
ISBN: 978-4-08-721330-0
2002年10月、右翼団体代表を名乗る男に襲撃され命を落とした政治家・石井紘基(こうき)。当時、石井は犯罪被害者救済活動、特殊法人関連の問題追及等で注目を浴びていた。その弱者救済と不正追及の姿勢は、最初の秘書・泉房穂に大きな影響を与えた。
石井は日本の実体を特権層が利権を寡占する「官僚国家」と看破。その構造は、今も巧妙に姿を変え国民の暮らしを蝕んでいる。
本書第I部は石井の問題提起の意義を泉が説き、第II部は石井の長女ターニャ、同志だった弁護士の紀藤正樹、石井を「卓越した財政学者」と評する経済学者の安冨歩と泉の対談を収録。石井が危惧した通り国が傾きつつある現在、あらためてその政治哲学に光を当てる。
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