「学校が過渡期であることを理解してほしい」

30代女性の教員(東京都公立小)も、「運動会の準備を本格的にすると授業時間が圧迫されるため、全国的に運動会が縮小されているのは、教師目線だと仕方がないことだと思います。でも、我々教師は決して運動会自体を否定しているわけではありません。例えば、『勉強が苦手だけど、運動は好き』という児童にとっては、運動会が輝ける場所だからです。縮小されても、実施することに意味があると考えています」と語る。
 

だが、前編の記事で紹介したように、半日ではなくコロナ禍以前のように一日がかりの開催を求める保護者も多くいる。

「保護者の方はできるだけ子どもの成長が見たいと思うので、1日開催を希望するのも理解はできます。ただ、保護者の方にも学校が今、過渡期にあることを理解してほしいと正直思います。

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周りの教師は、運動会の縮小に賛成する人が多いです。コロナ禍以前の運動会は指導する側にとっても、子どもたちにとっても、負担が大きかったと感じます。運動会を一日がかりでやると、走順、立ち位置、ダンスなど…子どもたちが覚えないといけないこともいっぱいあります。横についてサポートするなどの支援が必要な児童もいるので、指導はかなり大変でした」

「コロナ禍前と比べ、運動会の時間や内容を削減する傾向の学校は9割」という調査結果もある。現場の教員による「(運動会を縮小して)正直、助かっている」「子どもにも負担が大きかった」という言葉には、重みがある。

背景には、コロナ禍や保護者の意見だけでなく、教員の長時間労働への対策があった。文部科学省は近年、運動会を含む「学校行事」の簡素化を求めてきた。教員の負担を減らすため、授業時数の見直し、指導体制や教育課程の編成の工夫・改善等も提言している。また、コロナ禍で制限されてきた学校行事は「精選して実施すること」も求めている。

取材・文/なかのかおり 集英社オンライン編集部ニュース班