孤児1人あたり30〜50ドル、貧困家庭に月200ドル平均を支給

ジャバリアキャンプでイスラム協会の孤児支援を受けているナジュワ・ファラハト(49)の家を訪ねた。ナジュワは「この成績を見てちょうだい。1番よ」と、UNRWA学校の小学2年生の6男の成績表を見せ、「これならクウェートの団体も支援を続けてくれるはずよ」と笑顔を見せた。

子供たちはイスラム協会を通じて、クウェートのイスラム慈善団体の孤児支援を受けている。ナジュワの夫は、6年前に病死した。6男4女を抱え、一番末の子は5か月だった。夫はファタハのメンバーだったが、ファタハの支援だけでは足りず、知人に教えられてハマス系の慈善組織であるイスラム協会に援助を申請した。援助はすぐに認められた。

協会を通して、子供たちはクウェートやヨルダンの団体から月々400シェケル(約1万2000円)の援助を受けた。協会からは9月の新学年に学用品や制服が贈られ、ラマダンには小麦や米、食用油、砂糖など30キロの食料配給がある。

協会は診療所も経営し、孤児は無料で診てくれる。ナジュワは「イスラム協会のおかげで夫が死んだ後も何も困らなかった。ハマスの強引なやり方はいやだが、協会にはハマスもファタハもない」と語った。

イスラム協会ジャバリア支部事務局長のムニール・アブルジドヤンは「12万人が住むジャバリアキャンプで母子家庭1200世帯と貧困家庭454世帯を支援している。ここでは失業率は41%に上り、82%が貧困ライン以下の生活をしている」と言った。協会は家族の状況に応じて、孤児1人あたり30〜50ドルを支給している。

イスラムでは、父親がいないだけでなく、働き手が高齢や病気で働くことができない家庭の子供も孤児支援の対象とみなされる。イスラム協会は貧困家庭には月200ドル平均を支援している他、基礎食料品の食料バッグを配布している。

2007年のガザの年齢中央値は18歳であり、人口の半分は子供である。協会では、1家族の人数を8人で計算している。もし子供が多ければ、さらに支援額を増やす。協会はさらに社会事業として7つの幼稚園を運営し、1000人の園児を抱える。

診療所の他、事業としてパン屋や雑貨店も経営する。アブルジドヤンは「昨年の総事業費は支部だけで100万ドル(約1億1500万円)。今年は経済封鎖によって人々の経済状況もより厳しくなるから受益者が増加し、事業費も増えそうだ」と語った。

また、ラマダンはイスラムの聖なる月であり、夜の結婚式も盛んに行われる。イスラム協会は110組の集団結婚を実施し、それぞれ新カップルに300ドルを贈った。

私が訪ねた時はラマダンが終わった後で、アブルジドヤンは「ラマダンの間の特別支援として、登録している家族に食料の詰め合わせを配布し、孤児たちに服や靴の贈り物などを配布した」と語った。

そのためにイスラム協会は20万ドル(当時約2300万円)を出費し、ラマダンが終わると3万ドルの資金不足となった。「資金は湾岸のある国の慈善団体からの送金だった。しかし、武装闘争に流れているという疑惑をかけられて、2回送金してもらって2回とも銀行で止められた。その分の赤字だ」。協会はモスクを通して人々に「ザカート(喜捨)」を呼びかけた。その呼びかけによって、地域内の商人やビジネスマンら豊かな階層からの寄付が増えたという。

イスラム協会ジャバリア支部で、支援の食料を入れたビニール袋を持つ受益者の男性たち=2007年10月 撮影/川上泰徳
イスラム協会ジャバリア支部で、支援の食料を入れたビニール袋を持つ受益者の男性たち=2007年10月 撮影/川上泰徳

イスラム協会に対する海外からの送金を停止したのは、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治政府だという。2007年の6月に、ハマスはファタハ中心の自治政府の治安部隊・警察を排除してガザを支配したため、自治政府との関係は最悪だった。

「自治政府はガザのハマス系組織への送金が(軍事に)流用されていると言いがかりをつけて送金を妨害した。我々が外国の慈善団体から受け取る援助金はすべて民衆の救済に使われていることは、彼らも知っているはずだ。ハマスが政権をとる前の3年間、私たちは自治政府の会計監査を受けて何の問題もなかった」とアブルジドヤンは訴えた。