「長老たちの蠢きが岸田さんを徐々に追い詰めていった」
岸田首相はこれまでも重要な政治決断を周囲に伝えずに断行してきた。裏金問題を受けて岸田派の解散を決めた際にも、その独断専行ぶりが麻生氏の怒りを買った。今回は自身の政治生命を懸けた、まさに「自爆」ともいえるサプライズを仕掛けたことになる。
背景には、その麻生氏をはじめとする長老たちの水面下での蠢きが岸田首相の捨て身の決断に至らせた側面もあるのだという。
「岸田首相には当初、麻生さんらのシナリオ通り来年まで首相をして後継に託す選択肢があったようです。しかし、情勢分析を重ねた結果、総裁選に出馬しても勝てない、という結論に至った。
かねてから菅さんが石破さんらを担ごうとする動きもありましたが、ここにきて森喜朗元首相、二階俊博元幹事長といった政界を退いた重鎮の動きが活発化してきたことも耳に入っていた。彼らが主導する『岸田降ろし』に抗する気力を失ったという面もあるのではないでしょうか」(前出の秘書)
麻生派を率いる麻生氏と、派閥の枠組みにとらわれない独自の政治勢力を築いている菅氏との間では、従来から次のキングメーカーの座を巡る暗闘が続いてきた。その構図に、一時は鳴りを潜めていた森氏、二階氏が加わり、自民党内の権力バランスはさらに複雑になっているという。
「森さんは裏金問題の黒幕として名前が出ていた昨年末から今年初めにかけては露出を控え、老人ホームに入るなど表舞台から消えていた。二階氏も裏金問題にまつわる東京地検特捜部の捜査が続いている時期に重病説が出回り、存在感が薄まっていた。
ところが、ここにきて2人が永田町の会合に出席するなど、にわかに動きが活発化してきた。麻生さんとしては1年かけて岸田さんの後継を探して影響力を保持しようという腹づもりだったのでしょうが、そんな麻生さんの思惑にも岸田さんは当然気づいているはず。こうした長老たちの蠢きが岸田さんを徐々に追い詰めていったのでしょう」(前同)