現代日本は下流化しているのか、家族の形態や概念の変化か
翻って今はどうでしょう。低所得の男性の結婚率が低いことはかねていわれてきたことですが、近年、社会全体に単身世帯が激増していることが明らかになっています。
令和2年度(2020)の国勢調査によると、一般世帯のうち、世帯人員が1人の単身世帯(単独世帯)は38.1%、「夫婦と子供から成る世帯」は25.1%、「夫婦のみの世帯」は20.1%、「ひとり親と子供から成る世帯」は9.0% でした。2015年と比べると、「単独世帯」は14. 8%も増えて、一般世帯に占める割合は34.6% から38.1% に上昇しています。
先に紹介した鎌倉中期の下人の家族形態に似ていませんか?
下人には3世代同居は一例もなく、夫婦揃って子もいる家庭は全体の22.3%、最多はひとりみ(単独)で、全体の約42.6%でした。母子家庭・父子家庭といった、ひとり親と子の世帯も多かったものです。現代日本は全体に下流化しているのか、それとも家族の形態や概念が変わってきているのか。
今のところ、その両方の要素があるという気がしています。
歴史上、ひとりみだったのはどんな人々か
現代日本で「非婚」の人が増えているのは、一つには日本全体が貧しくなっていることがあるでしょう。
それとは別に家族というものの概念が変化し、非婚のまま「事実婚」を選ぶカップルや、同性婚を認められていないがゆえに結婚という手段をとれないカップルが少しずつ増えてきたということもあるかもしれません。
さらに、本人に結婚の意志がなく、非婚でいる場合もあるでしょうし、結婚したくても出会いがない、できないということもあるでしょう。つまり同じ「非婚」といっても、現代のそれは、前近代と比べると、個々人による事情の幅が大きいということが一つ言えます。
にもかかわらず、本人の意志とは関係なく、ある程度の年齢になると、親や世間からの「結婚」のプレッシャーは、まだまだ根強いものがあります。そもそも「少子化」を問題視する国の姿勢自体、「非婚」を否定し、「結婚」へのプレッシャーにつながっています。非婚のまま、子を持てる制度や環境が整っていればともかく、今の日本はそうではないので、とくに子を持つことは、どうしても結婚が前提となってしまうのです。
そうした現状を歴史の中で位置づけ、未来を予測するためにも、注目したいのが「ひとりみ」でいた、歴史上、そして歴史を反映する物語上の人々です。
そこには、先述のように社会的地位の低さゆえ、貧しさゆえにひとりみでいざるを得なかった人々のほか、宗教的な立場や、職業上ひとりみでいることを強いられる人々、性的な嗜好などからあえてひとりみを選んだ人々、さらには後世の偏見によって「あの人はあんなだから、ひとりみで生涯を終えたのだ」と決めつけられた伝説上のひとりみの人もいます。
彼らの生まれた背景や、思想や嗜好を見ていくことで、長い日本の歴史におけるひとりみの人々がどんな思いで生きてきたのか、また、世間はひとりみの人をどんな目で見ていたのか、結婚とは、家族とは一体なんなのかが見えてくることでしょう。
文/大塚ひかり 写真/shutterstock