リアルタイム視聴が生む「祭り」

吉田 映像作品においては繰り返し見られることを前提としている感じですか。『ほんとにあった!呪いのビデオ』のようなビデオスルーや、『放送禁止』のようなソフト化作品だと、繰り返し見られることが前提ですよね。特に今はレコーダーも普及していればTVerもありますから。

大森 まず最初にテレビ放送で見た時の手触りを感じてほしいというのはすごくあります。ただ、もう一回見たいなという人も今はTVerで見るだろうと、自分もそこは見据えてはいますね。

一発目は放送の時間帯で見てほしいのは見てほしいんですよ。『奥様ッソ』も『このテープ』も、年末の深夜帯なので、リアルタイム視聴する人がかなり少ないことは仕方ないですね。そこを前提に作っているというところもあります。

大森氏が手掛けた『このテープもってないですか?』
大森氏が手掛けた『このテープもってないですか?』
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吉田 となると、一昔前のテレビ制作とは違ってきますよね。

大森 テレビで一回放送していたという事実だけで感じ方が変わる人が多いだろうと思います。これがテレビで流れたんだ……ということで、ゾクッとしたり面白いと感じる。

吉田 その感じ方についてはコンテクストとして、文脈としてゾクッとしているということですね。放送時間に、テレビの前で見てゾクッとしているわけじゃなくて、これがテレビで流れたんだという文脈を怖がっているっていう。

実際、TikTokに切り抜き動画を上げる子って、その子たちはテレビを見ていなくても、テレビという権威のあるところでこんなことが起きたらしいよ、という文脈を共有している。元がYouTubeではそうはならないでしょうね。

大森 そこはやはり、ホラーと相性がいいと思いますね。笑いよりも、ホラーの衝撃度の方が。

リアルタイムで、インターネットやSNSで「大変なことが起きてるぞ!」と盛り上がってくれるのが本当は一番理想的だなとは思っています、今でも。『Q』も0時00分にプレミア公開します、というのをよくやられているので。みんなで同時に盛り上がることに意識的であり、魅力を感じているのでしょうね。

吉田 寺内康太郎さんの『境界カメラ』もそれを視野に入れた企画ですね。やはり祭り感なのかな。

『Q』はコメントを見ていても考察勢の考察祭りみたいなものが起きていますね。何人もの人がnoteやブログで書いていたり、見た後にそういう楽しみ方をしている。

大森 現実問題として、考察されるところまで盛り上がらないと話題作にならないんですよね、近年では。純粋に「怖かった! 終わり!」だと、話題になっているホラー作品って少ない気がしています。


文/吉田悠軌 写真/長谷川健太郎

ジャパン・ホラーの現在地
吉田悠軌
ジャパン・ホラーの現在地
2024年7月5日
1,650円(税込)
単行本/288ページ
ISBN: 978-4087881042
今、なにが怖い? 人気作家、TVプロデューサー、映画監督、配信者など、日本のホラー文化最前線のクリエイターたちとともに考える論考集。
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「怖かった! 終わり!」では済まないジャパン・ホラーの現在地。フェイクドキュメンタリー、考察ブームがここまで盛り上がってるワケ【吉田悠軌×大森時生】_5

「行方不明展」概要                       
タイトル:行方不明展
場所:三越前福島ビル
住所:東京都 中央区 日本橋 室町1-5-3  三越前 福島ビル 1F
※東京メトロ「三越前駅」徒歩2分
開催時間:7月19日〜9月1日  11時〜20時 ※最終入場は閉館30分前
※観覧の所要時間は約90分となります。
料金:2,200円(税込)
主催:株式会社闇・株式会社テレビ東京・株式会社ローソンエンタテインメント

WEBサイト(チケット購入はこちらから):https://yukuefumei.com/

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