月9=王道ラブストーリーの礎
先に挙げた「東京ラブストーリー」や「ロングバケーション」のように、月9といえば王道ラブストーリーの印象が強いだろう。
元々は、1987年に放送されていた「アナウンサーぷっつん物語」(1987)「ギョーカイ君が行く」(1987)などの、いわゆる業界ドラマから月9の歴史は始まっている。テレビ局の裏側を描いたドキュメンタリータッチのドラマシリーズは、現職のアナウンサーが本人役で出演したり、実際に放送中の他番組(「笑っていいとも!」など)とコラボレーションしたりなど、さまざまな試みをしていた。
その後、1988年〜1990年にかけて、青春ラブコメやトレンディドラマの波がやってくる。「君の瞳をタイホする!」(1988)「同・級・生」(1989)「キモチいい恋したい!」(1990)などが代表例だ。
この流れを受け、1991年に放送された「東京ラブストーリー」や「101回目のプロポーズ」などが、磐石な「月9=王道ラブストーリー」のイメージを形作った。放送から約30年経つ現在でも語り継がれる名作揃いである。「月9ドラマといえば?」と問われて思い浮かぶ定番ドラマは、1990年代を中心に放送されていたことがわかる。
流れに待ったをかけた2000年代の月9
1990年代に形成された王道ラブストーリーの流れに、待ったをかけたドラマがある。その1つは、2001年に放送された「HERO」だろう。木村拓哉、松たか子主演のいわゆる”リーガルもの”として人気を呼びシリーズ化、後に映画にもなった名ドラマである。
「HERO」に関しては恋愛要素がゼロではなく、検事・久利生公平(木村拓哉)と担当事務官・雨宮舞子(松たか子)との関係性を描く場面もある。しかし、基本的には起こる事件に向き合い解決へと導く、リーガルものの原型を体現したドラマだ。
このドラマを皮切りに、2002年放送の「人にやさしく」や2003年放送の「ビギナー」など、恋愛要素を主軸に置かないホームドラマや青春群像劇が目立つようになる。
そうは言いつつ、2003年放送の「東京ラブ・シネマ」や「愛し君へ」(2004)「プロポーズ大作戦」(2007)などのラブストーリーが多く生まれたのもこの頃だ。コメディ要素が強めになったり、病気や障がいなどのテーマが絡んだり、在日外国人との関係性を描いたりなど、純粋なラブストーリーとは若干違ったものを目指す工夫も感じられる。
2000年代は、1990年代からの流れを受けたラブストーリー路線と、リーガルものを始めとする異ジャンル路線が入り混じった年代と言えるかもしれない。