今後の美容室業界の動向

美容室業界の今後の動向についてはどうなのだろうか。

「今の消費者は、生活コストがインフレで上がっている一方で、給料はあまり上がっていないのが現実です。そうなると、生活費の中でも必須とはいいがたい美容に使うお金を減らす必要があり、価格が少しでも安い美容室を探すようになる。

顧客がサロンを選ぶ際には、技術力や店の雰囲気が重視される側面も大きいので、顕著には現れないかもしれませんが、低価格サロンの需要が高まるという傾向がしばらく続くかもしれません」

美容室が過去最多ペースで倒産、もう技術だけではやっていけない時代に…チェーン店は労働環境改善に取り組むも、個人経営店の行く末は…_5

たとえ、独立・開業したとしても、個人経営を成り立たせるのはさらに苦しくなるだろう。

「美容室業界では今後、労働環境が整った店舗に人材が集まると予測されます。例えば全国に展開するヘアカット専門店『QB』は、給与の高さに加え、残業手当も1分単位で支給されていたり、大手美容室・美容院『Hair&Make EARTH』では奨学金返済サポートなどの制度が充実していたりと、美容師の労働環境の改善に着目する企業も増えています。

美容室が過去最多ペースで倒産、もう技術だけではやっていけない時代に…チェーン店は労働環境改善に取り組むも、個人経営店の行く末は…_6
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このように大手企業のほうが福利厚生や給与の面で、個人経営店よりも充実しているケースが多々あるため、人材が大手企業に流れ、個人経営店が減少していく可能性は否定できません」

取材・文/逢ヶ瀬十吾(A4studio) 写真/shutterstock