客の増加に対応するために作られた「DXシリーズ」

しかし、どうして秋葉原店には、このような特別な丼がメニューとしてあるのか。

その意図を知るために、富士そばで開発・企画・広報を務める工藤寛顕さんに話を聞いた。本題に入る前に、工藤さんに、今注目している富士そばの店舗限定メニューも紹介してもらった。それが以下の通り。
 

・拉麺梅太郎そば940円(国立南口店・立川店)

・DX柔らかポークの薬味たっぷり玉子丼2300円・贅沢しあわせかつ丼980円(秋葉原電気街店)

・ミニだいたいうに丼780円(ダイタンイート株式会社)

・ニラレバ丼690円(赤坂店)

・インフィニティコロッケそば950円(秋葉原電気街店)

・「歌志軒」とコラボした油そば(代官山店、秋葉原店など)

「拉麺梅太郎そば」なんて、そばなのかラーメンなのかわからないメニューや、まさかの「うに丼」(しかも、“だいたい”!)など、ツッコミたくなるメニューが多すぎる……。気になった人はぜひ食べてみてほしい。

リストの中には、秋葉原電気街店の「DX」シリーズもちゃんと入っている。

ではさっそく、この「DX」シリーズの謎に迫っていこう。

「名代 富士そば」の外観(写真は川越店)
「名代 富士そば」の外観(写真は川越店)
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──秋葉原電気街店の「DX」シリーズは、インバウンド需要を見越して作られたのでしょうか?

工藤寛顕(以下同)
 必ずしもそうではありません。実は、秋葉原電気街店の状況を打破するための施策の一つなんです。

──なるほど。その状況とは……?

実は、この店舗はお客さまの数が1日に2000名を超えてしまう状況でした。

理由は3つです。もともとの好立地に加え、物価高騰で地域の中で最安値で食事ができる場所の一つになったこと、そこにインバウンド客の増加が合わさりました。
 

──さまざまな状況が重なって大人気店になったんですね。でも、それは喜ばしいことのような気もしますが……?

しかし、あまりにも忙しい環境で、働き手のほうが疲れ果ててしまったんです。その状況を打破するために、「To be FUJISOBA Deluxe」(DXシリーズ)として、新たな「高品質基準」の開発、販売に取り組みました。お客さまの数は減りましたが、スタッフの働く環境をよくするという意味では成功していると思っています。

──なるほど。働き手の労働改善に向けたメニュー開発でもあったんですね。こうしたメニューは、秋葉原電気街店以外でも提供されているのですか?

評判のいい商品は秋葉原電気街店で販売を始めて、ダイタンキッチン株式会社が運営する店舗で販売の拡散をしています。
 

──お客さんの反応はどうでしたか?

一部で、「高い! インバウンド丼だ!」というネガティブなコメントはありました。しかし、理解してくださっている方は、弊社の挑戦を応援してくださっています。マニア、ファンの方は定期的に訪問し、「この内容でこの値段ならば妥当かもしれない」といった具合で応援してくれています。



どうやら、「DXシリーズ」はインバウンド向けに開発された商品というよりも、むしろ、店員の負担を減らすために高単価の商品を開発したという流れのようだ。

一部のファンの間で「この内容でこれなら妥当」という意見が出るのは、もっともだと思う。いや、実際めちゃくちゃおいしいんですよ。もし秋葉原に来る予定があれば、この「DXシリーズ」を食べてみてほしい。

最後に、工藤さんに今後の富士そばの限定メニュー展開について聞いてみた。

「今年は地方自治体コラボ企画で沖縄県の漁業共同組合との企画を実施します」

なんと、富士そばで沖縄ならではの味が食べられるのだという。その第1弾は県産生もずくをふんだんに使用した「生もずく冷し特撰そば」。一体どんな味なのだろうか……。

予想を超える富士そばのメニューを引き続き注視していきたい。


取材・文・写真/谷頭和希