「娘さんのパンティを持ってきてくれるなら、会おうよ」
母親による暴力は、体罰だけに留まらない。
「小学校高学年のとき、当時流行していたmixiというSNSで母親が複数の男性とやり取りをしていることを突き止めました。ほとんどがただの不倫相手とおぼしきなかに、ひとりだけ異質な人物がいました。
その人物は、『娘さん何歳?』『娘さんの写真くれる?』などとしきりに子どもについて尋ねているのです。母はその人物に対して会うことをせがみ、私と妹の写真を送っていました。すると、彼からこんな返信があったのです。『じゃあ、娘さんのパンティを持ってきてくれるなら、会おうよ』」
その後のメッセージのやり取りで、きっしー氏は母が男性に会いに行ったことと、娘の下着を渡したことを知った。
この体験からきっしー氏が感じたことはいかにも面白い。それだけでなく、フィクションの性を提供する道へ進む原体験ともいえるものだ。
「無力な娘をダシにする母親のことは許せませんでした。ただ、性に対する嫌悪にはつながらなかったですね。むしろ、こうした留めることのできない性を、『どうすれば他者に迷惑をかけずに発散できるようになるのか?』とどこか俯瞰した視点で考えるようになりました」
もともときっしー氏にとって、母親は親とはいえ頼るべき対象ではなかった。
「ヒステリックな反面、母は非常にぼんやりした性格で、会話が噛み合ったことはありません。たとえば私は中学受験に際して地元の個人塾へ通いましたが、その三者面談のあと塾長に呼ばれて、『お母さんは話がわかっていない様子だから、今度から別の方を連れてきてもらえる?』と懇願されたほどです。
また、小学校の授業参観のときは、授業中なのに同級生の男の子に話しかけてしてしまうなど、悪目立ちしていました」
家族とはずっと離れたくて仕方がなかった――そう話すきっしー氏にとって転機となったのは、大学在学中の“ある事件”だ。
「突然、母から妹が妊娠9ヶ月であることを知らされました。それまで母も知らなかったようです。妹は母に似てぼんやりした性格です。保育系の短大に進学したのになんの資格も取らずに卒業し、就労支援でやっと保育と関係のないパートにありつけたような、およそ計画性に乏しい子です。
どこかで彼女のことを心残りに思って家族と繋がっていましたが、お腹の子の父親と結婚することになったと聞き、踏ん切りがつきました。私は家族のLINEをブロックして、完全に絶縁することにしました」