天職は身近にあった
――高校卒業後、バイト仲間が辞めて行く中で、なぜ諸沢さんはお店に残ったのですか?
諸沢 西牧への恩ですかね。弊社では自社アプリで日報を書いて、コメントし合うことでコミュニケーションを図っていますが、社長だった西牧も毎日読んでくれていて、心配なときはお店まで話に来てくれたんです。
――高校卒業後に社員にはならなかったのですか?
諸沢 私には誰かのために動きたいという目標があって、それでボランティアを始めたんです。なのでアルバイトのままでした。
ボランティアでは募金活動などに参加しましたが、人との関わり方が間接的で、やりたかったことと一致しませんでした。私は相手が喜んでいる顔が直接見たい、私と出会ったことで人が変わる瞬間を見たいんだなと気がついて。
ボランティアには求めていたものがなく、進学をしなかったことを後悔して落ち込んでいたとき、バイトの日報から私の変化を感じ取って西牧が話を聞きに来てくれたんです。それで「身近な人のために働くのも素敵なんじゃない、そのためにお店を使っていいよ」と提案してくれて、こんなに近くにやりたいことがあったんだなとスッキリしました。
私は10代のころに具体的な夢がなくて、それがコンプレックスだったのですが、職業だけではなく「どうありたいか」も夢なんじゃないかと気がついたんです。ちなみに、西牧の夢は「モテたい」だったそうで(笑)。実際それで人を助けているから、それはそれでいいのかなと思って。
他の人にできない、社長の仕事ができる人
――会長との密なコミュニケーションが原体験としてあるのですね。やはり“お気に入り”だったんでしょうか?
諸沢 確かに私だけかどうかはともかく、お気に入りの子を強くフォローしているのでは? と思っていました。でも社長へのオファーを受けて西牧に同行するようになってわかりましたが、社員全員に同じようにフォローしていたんです。
日報のフォローはもちろん、店舗を回って全員に必ず「困ったことある?」と聞いていて。特に、元気そうで自分からは悩みを言ってこなさそうなスタッフにも聞くということに驚きました。「窓口を広げておかないと言ってこられない人もいるんだ」と。
商品で差を出せないフランチャイズでは、人材や店舗運営で差を出さなければならないので、こういう細やかなフォローが社長として大きな仕事なのだなとわかりました。私も社員全員と関わりがある社長でいたいと思っています。
実は社長就任前に店長経験をするために、3ヶ月間弊社で一番忙しい店舗で店長をさせてもらったんです。あまりにつらくて、泣きながら調理してヘトヘトで帰って「自分が一番できないのに店長ってなに?」と考える毎日でした。その経験があるから、もっとスタッフの気持ちに気がつけるようになりたいです。