何度昇給しても最低賃金ライン…

入社2年目は精神面だけでなく、給与面でもシビアな問題がある。ここ数年は人手不足の影響からか、新卒の給料をアップする会社が増えているが、一方で既存の社員の給料をその分あげるわけでもないため、なんと入社から数年経って少しずつ昇給していった社員より、新卒の給料のほうが高くなるパターンがあるという。

時事通信の調査によると、国内主要企業100社の6割が、今年の春に入社した新入社員の初任給をアップさせている。そうした影響からか、SNS上では〈俺の2年目の給料より今の新卒の方が高い〉〈新卒スタートの月給の方が7年目の私より高いというバグ〉〈前職、10年目の自分よりも3年目のほうが給料高いのを知って途端にやる気失ったのを覚えてる〉といった不満があがっている。

特に入社2年目は住民税が引かれて手取りも下がるため、モチベーションがダダ下がりしてしまうというわけだ。

2年目以降のこうしたジレンマは、パートの現場でも起こっている。東海地方で接客業をする20代前半の女性・Aさんは、勤続5年目で“同じ職場で働き続ける”モチベーションを失い、転職を決意した。

「勤続5年で店を回すような仕事もある程度できるようになったり、人の少ない休日に積極的に出勤したりと努力を続けてきたのですが、最近入ったあまり出勤しない学生バイトの子と時給がほぼ変わらないことがわかり、モチベーションを失ってしまい、退職を決意しました。

もちろん、昇給などは都度していただいてたんですが、県の最低賃金もどんどん上がっていたので、結局、いつまでも最低賃金スレスレで働いているだけだったんです。ここ数年は本当にそれの繰り返しでした。昇給分とはまた別に、最低賃金が上がったときにその分を上げてくれたら、もっとモチベーションは保てたと思います。最後は、『上がっても上がってもずっと最低賃金。どこで働いても一緒じゃん!』と思って、悲しくなって仕事を辞めました」

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初任給のアップ、最低賃金のアップは人員を増やすどころか、既存の社員のモチベーションを下げ、逆に離職率を高める結果になっている場合もあるようだ。

Aさんはこの給与面での不満に加えて、立場が上がることで責任が増えることのダブルパンチだったという。

「人に教えること自体は好きなのですが、気の弱い性格でもあり、人を叱ることができず、後輩の気になる点をなかなか直接言えませんでした。入社から2年目以降は、カバーに回ることが多くなったのですが、それでもやはり給料は後輩と同じ…。

また私の性格上、仕事を自分で見つけるのが下手で、上司に『これしといて』って言われたのをやるほうがやりやすかったので、入社したての後輩だったころが一番楽でした。また、社員さんなどがサービス残業や、休日なのに出勤して無賃金で働くみたいな場面も見ていたので、責任のある立場になりたくないなぁという思いが強くなりました」(Aさん)

たくさん人材を獲得しても、流出が増えてしまえば元も子もない。企業と労働者、それぞれの悩みが尽きることはなさそうだ。

取材・文/集英社オンライン編集部