第14作『天空の難破船(ロストシップ)』、第15作『沈黙の15分(クォーター)』は
まったく別の曲を経由する「入れ子方式」

第13作『漆黒の追跡者(チェイサー)』では、ジャジーな間奏から、なんとシリーズ初の転調でFマイナーからEマイナーへ!

続く第14作『天空の難破船(ロストシップ)』では、イントロが不思議な高揚感を出している。コード進行自体はいつもと同じだが、切り換えを2小節に1回にすることで、かつて西城秀樹がカバーした、ヴィレッジ・ピープルの『ヤングマン』っぽくなっているのだ。

このバージョンはすみずみまでおもしろく、間奏ではA♭メジャー(元のFマイナーに対して平行調。つまり、#や♭の数が変わらない調)に転調し、まったく異なるメロディーが奏でられる。ジョン・ウィリアムズ作曲の『E.T』のテーマを思わせる、飛翔感あふれるメロディーだ。

そこから『銀河鉄道999』のイントロ風ラインを経てAメロに戻ってくるのだが、今度は空から一気に地底に降りたかのように、ピアノの低音が担当する。このパート、Aメロとしては『コナン』史上最低音域。おすすめアレンジのひとつだ。

 

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いい感じにバーリトゥード(なんでもあり)になってきたのがおわかりいただけるだろうか。これは音楽担当者側の都合だけではなく、物語のキーパーソンが増えるにつれ、間奏以降にかかるナレーションが多様化していったためでもあるだろう。

途中でまったく別の曲を経由する「入れ子方式」は、次の第15作『沈黙の15分(クォーター)』でさらに大胆になる。

雪山を舞台にした本作は、2コーラス目のあとに突如としてCメジャーという離れたキーへと移り、のどかなメロディーが始まるのだ。シリーズ初の3拍子で、これを聴くと私はどうしてもサザンオールスターズの『山はありし日のまま』を連想してしまう。3拍子で似ているのと、山岳遭難というテーマが一致するからだと思われる。公開は2011年4月、多くの被災者を出した東日本大震災の直後だった。