いわば『太陽にほえろ!』の弟分

『名探偵コナン』(青山剛昌、小学館)は、原作漫画の連載が30年目の大台を迎え、毎年恒例の劇場版アニメが今春で27作目を数える、超人気長寿作品だ。連載3年目にアニメ化されるにあたって作られたテーマ曲(以下、メインテーマ)を手がけたのは、1960年代から幾多のヒット曲や劇伴(映画・テレビドラマのBGM)を作り続けてきた大野克夫氏である。

大野氏には、昭和後期の人気刑事ドラマ『太陽にほえろ!』の劇伴を作った実績があった。『コナン』のメインテーマは、推理モノに加えて刑事モノの要素もある物語の世界観に合わせて作ったらしく、『太陽にほえろ!』のメインテーマに雰囲気のよく似た、いわば弟分のような曲になった。

そしてこれが、物語本編を知らない人々まで惹きつける、最高にカッコいい名曲となったのだ。ほかでもないこの私も、メインテーマから『コナン』に興味を持ったファンのひとりである。

 

新作のたびに新アレンジを加える魔曲、劇場版『名探偵コナン』メインテーマ27年の歩み「いわば『太陽にほえろ!』の弟分」「サックスのイメージが定着したのは『世紀末の魔術師』で」_1

 

『コナン』制作陣と大野氏の偉大なところは、その後、劇場版がシリーズ化されると、新作のたびにメインテーマに異なるアレンジを施すようになったことだ。これがどんなに大変なことか、作曲した大野氏本人が20年前のインタビューで語っている。

「毎年出すのは大変だけど、中でもメインテーマをどうするかが一番大変。毎回アレンジを変えているんですが、もうネタ切れなんですよ(笑)」(JASRAC「作家で聴く音楽 第十五回」)

裏を返せば、劇場版アニメ『名探偵コナン』の27年間には、楽曲アレンジのためのネタ、コツ、アイデアがたくさんつまっているということ。以下、『コナン』メインテーマの魅惑のアレンジ変遷史をひもといてゆこう。