オペレーションの複雑化で出店スピードが落ちる?
もう一つ気がかりなのが、主力のアメリカ市場だ。スターバックスの2024年1Qのアメリカエリアの売上高は、前年同期間比8.7%増の66億4300万ドル。前四半期比でも3.4%増と堅調だ。
2024年1月の決算説明時に、アメリカの店舗で顧客が1回当たりに注文する金額が増加したと説明している。客単価が上がったということだが、要因は2つある。1つはチョコレートやホイップクリームなどのオプションを追加する顧客が増えていること。もう1つはフードメニューの購入比率が上がっていることだ。
アメリカではコールドドリンクの需要が旺盛で、オリーブオイルを加える「オリアート」が人気だという。フードはサンドイッチやジャガイモを使った新メニューが好調。フードメニューは今後さらなる充実を図る計画だ。
そうなると、ドリンクとフードを提供するオペレーションは複雑化を極め、将来的に提供スピードが落ちる可能性がある。アメリカは日本と異なり、いかに早く提供されるかが最も重視されるのだ。メニュー構成が複雑化する中で、円滑な店舗オペレーションを構築するためにはスタッフの教育に時間が必要。出店スピードが落ちる懸念がある。
直営店主体の飲食店にとって、出店スピードの鈍化は命取りだ。トップラインの伸び悩みは、株価にも甚大な影響を与える。2023年に新CEOとしてラクスマン・ナラシムハン氏が就任した。その手腕に注目だ。
取材・文/不破聡