デジタル時代に最適化した回転率至上主義のラッキンコーヒー

世界的なカフェチェーンにとって中国は魅力的な市場だ。イギリスの調査会社ワールド・コーヒー・ポータル(「East Asia branded coffee shop market booms as China overtakes US by outlets」)によると、東アジアのカフェの店舗数はおよそ12万。そのうち、中国は5万で全体の4割を占めている。中国のカフェ利用者のうち、9割以上がホットコーヒー、6割以上がアイスコーヒーを毎週飲むという。ヘビーユーザーが多いのだ。中国の都市部の人口は9億人。まさに巨大市場と呼ぶに相応しい。

この調査では衝撃的な内容が浮き彫りになっている。中国のカフェ利用者のうち、85%が事前注文とデリバリーを使った経験があり、57%が店舗利用よりもデリバリーサービスを好むと回答しているのだ。

この消費動向に最適化しているのがラッキンコーヒーだ。この会社の一番の特徴は、商品の提供で生じるムダを可能な限り省き、回転率を上げること。専用アプリからのみ注文を行ない、配達か店舗で受け取る運営モデルを構築した。スターバックスのようにカウンターに並んで注文を伝える必要がないのだ。

デリバリーでも、手数料は100円程度のオプション料金に過ぎない。ラッキンコーヒーはデジタル時代の申し子のような存在で、人間力で提供の質や居心地のよさを高めたスターバックスとは正反対のビジネスモデルをとっている。

写真/shutterstock
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急速に変化する中間層の消費意識

コロナ禍を迎える前までの中国は、プチ贅沢といえるようなカフェ需要があった。マクドナルドのように居心地はそうそうよくない場所を避け、静かでゆったりとした空間でコーヒーを飲む時間を楽しもうとしていたのだ。スターバックスはこの消費動向に最適化していた。
中国のスターバックスは、2013年ごろにアメリカよりもコーヒーの値段が高いと国営中国中央テレビなどで報じられて炎上した過去がある。

強気の値段をつけられたのも、中間層が背伸びをしてちょっとした贅沢を楽しみたいという消費意識に支えられていたためだ。それが今や、コーヒーは安く、早く、好きな場所で飲むというスタイルが定着した。スターバックスはこの急激な変化についていけないはずだ。中国の出店戦略を見直す可能性もある。