静岡県政関係者からは辞意表明に冷ややかな反応

その一方で新型コロナウイルス対策として県民にワクチン接種を強く推奨しながら、自らは危険性を訴えて接種を頑なに拒否し続け、ワクチン接種後に死亡した被害者の遺族や後遺症に苦しむ人たちから強烈な責任論が噴出した。

「舌禍」に関してはこれまで枚挙にいとまがなく、2021年6月には自らが学長を務めていた静岡文化芸術大学の学生について「8割ぐらいが女の子なんです。11倍の競争率を通ってくるんですから、みんなキレイです」と学力と容姿を結びつける“不適切発言”をし、謝罪して撤回。

同年10月の参院補選の応援演説では、対立候補が御殿場市長を務めていたことを引き合いに「あちらはコシヒカリしかない。だからメシだけ食ってそれで農業だと思っている」などと発言し、県議会で辞職勧告決議案が可決されると、自身のボーナスなど440万円を返上すると表明。

しかし、この約束を守らず給与を返上していなかったことがバレて大騒ぎになり、昨年7月には不信任決議案が1票差で否決され、このとき「私の不徳の致すところ。今度迷惑をかけたら辞職する」と述べるなど、自ら特大のブーメランを空高く放っていた。それだけに静岡県政関係者からは、突然の辞意表明に対しても冷ややかな反応がほとんどだ。

集英社オンラインの取材に現職の静岡県議4人が答えてくれた。

2006年、知事になる以前の川勝氏(写真/共同通信社)
2006年、知事になる以前の川勝氏(写真/共同通信社)

「今回の失言もそうですが、過去の発言に関しても本当に県民のことを思っていればそんな言葉は出ないはずですから、辞職は当然のことだと思っています。今回の失言は、去年の7月に給与返上の件で不信任決議案が否決された際の『約束』に該当すると判断したので、近日中に辞職を促す文書を出すつもりだったし、それでも辞めないようなら不信任決議案を出そうと考えていました。

そういう意味でも自分なりに情勢を判断して辞意表明に至ったのでしょう。これまでも御殿場市に対するコシヒカリ発言や、今年3月には藤枝市のサッカー強豪校に『勉強よりもボールを蹴ることだけが重要なこと』と発言するなど知事にふさわしくないと思っていましたが、ご自身で進退を決めたことだけは評価できます。

次の知事選ではリニア計画が一番の争点になると思いますが、もし県内にリニアが通れば、新幹線の利便性も上がっていくんじゃないでしょうか。私個人としては川勝知事が退いたことで、確実に静岡県はいい方向に向かうと思います」(60代男性県議)