北朝鮮との外交関係にも暗雲?
21日の試合では在日朝鮮人ら約3400人が国立競技場のゴール裏をチームカラーの赤に染め、熱烈な応援を送っていた。
終了直後、まだ平壌での試合が開催中止になったことを知らない、北朝鮮サポーターで朝鮮学校中級部に通う男子生徒(14)も、「強い日本とこんなに張り合うことができた。今日の後半みたいな戦いができれば、ホームでの試合はワンチャンある」と期待を膨らませていた。今回の“ドタキャン”はこうした在日社会にも予想外の知らせとなったことだろう。
北朝鮮は平壌での試合に先立ち、日本外務省の北朝鮮担当者らの訪朝を認めると伝えられてきた。
「今年2月、金正恩氏の妹、金与正党副部長は核戦力開発と拉致問題を日本が“障害物”とみなさないことを条件に『岸田文雄首相の訪朝もあり得る』と表明するなど、北朝鮮は日本との対話の可能性を探る姿勢を見せています。
日本でも与党内でも拉致問題の打開を模索する動きが活発になっており、日朝高官協議を実現したいと公言してきた岸田首相が動ける環境が広がりつつあります。
2月のサッカー女子チームの来日と今回の男子チームの来日、平壌への日本代表と外務省職員の派遣はこの流れを後押しする可能性がありましたが、今回の急な決定は予想外の事態です」(大手紙記者)
日朝対決が終わった国立競技場のそばで、日本サポーターの井部剛さん(65)は第2戦の平壌開催中止の理由をこう推測し、怒りの表情を見せた。
「将軍様(金正恩)に負け試合を見せるわけにはいかない。(中止を)聞いたとき、直感的にそう思いましたよ。でも、そんなのダメに決まってるじゃない!
今日の試合で北朝鮮はしっかりやっていたし、ホーム(平壌)でやればもっといい試合を見せたかもしれない。平壌開催中止は今日の試合前に決めたようだし、とても解せない」と首をかしげる。
ドタキャンの理由は本当に感染症対策なのか、将軍様のご機嫌とりのためか、はたまた何らかの政治的事情なのか。いずれにしても26日の試合はどうなるのか。タイムリミットはすでに過ぎている。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班