キャリア迷子を脱するために「理想を描く→現在地を知る→行動する」
では、こうした「キャリア迷子」から脱するにはどうしたらいいのだろうか。喜多村さんは、3つのステップに分解して考えてほしいと語る。
ステップ1 理想を描く
ステップ2 現在地との差分を知る
ステップ3 行動する
「まずは自分の理想とする人生やライフスタイル、キャリアを具体的にイメージしてみてください。このとき『やりたいこと』を探そうとするのではなく、『ありたい姿』を考えるのがポイント。
やり方としては、自分が大切にしている価値観や好きなことなどを、ノートなどに書き出してみるのがオススメです。そうすると、ぼんやりと頭の中にあったイメージの解像度が上がり、『ありたい姿』がハッキリとしてきますよ」
理想のイメージが全く湧かないという方は、まずは情報収集をしてみるのもよいそうだ。
「身近な人に話を聞いたり、SNSや社外のコミュニティなどで自分の理想に近い働き方や生き方をしている人を見つけたりできますよね。
『この人素敵だな』と思う人に出会ったら、どんなところに惹かれたのかを具体的に言語化してみてください。あなたが大切にしている価値観を知るヒントになるはずです」
「ありたい姿」が描けたあとは、「現在地との差分を知る」ステップに移る。
「『現在地』とは、スキルや働き方などの面で今自分がどんな状態にあるのかを指します。働き方の面では、今自分がプライベートの時間を大切にできているか、などのポイントを確認してみます。
またスキルと言われると、『自分に強みがない』と感じてしまう方も多いかもしれません。でも、これまで周囲に褒めてもらえた経験や、他の人よりも苦なくできてしまう仕事はないでしょうか。これらがあなた固有のスキルや強みにつながると思います。一緒に働く人に聞いてみるのも良いですね。
こうやって自分の『現在地』が確認できたら、ステップ1で描いた理想の状態との“距離”を振り返っていきます。どんなスキルを身につける必要があるのか、どんな働き方が実現できれば理想的か、具体的に洗い出してみてください」
「キャリア迷子」脱出に向けた最後のステップは「行動」だ。ここで喜多村さんは「転職」だけが選択肢ではないと語る。
「今は色々な選択肢がありますので、転職以外の選択肢も検討してみた方がいいですね。
例えば現職に留まったまま、副業(複業)から小さくスタートしてみるのもいいでしょう。最初からお金をもらうのがハードル高く感じたり、現職に『副業禁止』などの制限があったりするなら、興味のある会社や領域でプロボノ(※)・ボランティアでやってみるのもオススメ。
そういった『第三の居場所』の中でやりがいや価値を発揮できたと感じたら、副業や転職活動を本格化させてもいいと思います」
※プロボノ:社会的・公共的な目的のために、職業上のスキルや専門知識を活かして取り組むボランティア活動
「キャリア支援のプロ」である喜多村さん自身も、過去にこのステップに従ってキャリア形成をしてきた原体験があるそうだ。
「新卒で大手コンサルティング会社に入社したものの、学生時代から漠然と起業したいという思いが捨てきれなくて。でも、本当にここで会社を辞めて挑戦するべきなのか自信が持てませんでした。
だからまずSNSなどを活用して、興味ある領域で仕事をしている人にアポイントをとったり、知人に紹介してもらったりして、積極的に情報収集をしました。そうしたら、ある方に『まずはボランティアでうちの会社を手伝ってみない?』と声をかけていただいて。副業で参画して、そのままそこに転職。そのあとしばらく準備をして起業に至りました。
一足飛びにキャリアチェンジをしようとするのは難しいので、少しずついろんな人や場所で自分の力や適性を試しながら、居場所を見つけていけばいいと思います」