政策づくりは“あるあるネタ”なんです
――スラップ訴訟の他に取り組んでみたい政策はありますか。
僕が考えている解決方法のほうが、より人を喜ばせるし、笑顔にできるというようなものは、いくらでもあります。特に沖縄なんて政策の縮図です。
政策づくりって新ネタづくりと似たところがあって、僕にはまったく苦にならないんです。例えば、世論が51対49になるような難しい課題に対して「こうすべきじゃないですか」と言った時に、国民に「あぁ、これは私の問題なんだ」と認識してもらうのは、言ってみたら“あるあるネタ”なんです。
「防衛費の5兆円増は問題だ!」と言われてもよくわからないけど、「このお金をうまく使えば大学院まで無償化できますよ。あなたたちはそんなチャンスを逃しますか」と言われたらどうですか。これはあなたたちの問題ですよ、ということじゃないですか。
そういうことを働きかけて、講演し、地方を歩き、若者と議論するというのは、これまでやってきた芸人の仕事と、本質的にそう変わらないと思ってます。
――そこで国民の共感を得るというのは、舞台でお客にウケることと似ていると。
そうですね。ちなみに、れいわの人はしゃべりがみんなうまいから「やっぱりそうか、話芸なんだ」と思って聞いています。「そうか、このリズム、このテンポなんだ」という。舞台袖ぐらい勉強になる演芸の場はないですからね。
――それにしても、れいわの弁士というのはそれぞれ言葉が立ってますよね。
はい。ただ、東京にいる維新の若手の人たちもなかなかうまいですよ。それだけに松井市長の演説の下手さというのは際立っていますね。よくぞ、こんなカリスマ性のない人が代表をやっているものだなと。
――れいわでいえば、くし渕万里、大石あきこ両議員のコンビ芸というか、フリップを使った演説は面白いですね。
面白いし、かわいいですよ。あの衣装が一緒な感じとか、いいですよね。この前、大石さんが衆議院予算委員会で岸田総理に対して「財務省の犬だ」と言ってくれたんですけど、僕は「いえ、違いますよ、犬は僕たちですよ」と言ったんです。
――「犬は僕たちれいわのメンバーです」という返しですね。
「国民の犬が僕たちです」と。それで次の日は、「犬というのは言いすぎました。批判を浴びました。忠犬の誤りです。正しい忠犬でありたいです。逆に政権に対して僕は番犬でありたいです。そういう意味での犬でした」と。全部アドリブですけど、これは芸人の時からやっている仕事ですからね。
――芸人のスキルを国会に転用できるのではないかと。
毀誉褒貶ありますが、ゼレンスキー大統領も出てきましたし、今後「芸人は完璧に政治家に向いている」ということが世界中で認識されていくように思うんです。もし僕が政治家として成功したら、日本でも続く人が絶対に出てくると思う。
身近な人の悩みや世の中における格差、不公平に対する抗議って、芸人が毎日やっていることですからね。僕は今回、覚悟を決めてルビコン川を渡ったんですが、そこで見えた風景は意外なものでした。「なんだ、今までとまったく変わってないじゃないか」って。
(前編はこちら)
取材・構成/木村元彦 撮影/苅部太郎