集団塾では元々できる子がさらに成績を伸ばしているだけ
――著書『国語の心得』では、集団指導塾に向く子と向かない子にも言及されていますね。
集団指導塾は国語の問題の『解き方』を教えることが多いです。そして演習問題、解説……というスタイルが一般的だと思います。しかし、これについていけるのは国語の『取り組み方と考え方』という素地を身につけていることが前提です。
それが身についていない子(国語が苦手な子)が解き方だけを教えられても、元々の素地がないので成績はほとんど伸びません。
つまり素地がある子、つまり国語が得意な子だけが集団指導塾で順調に成績を伸ばしているんですね。素地がない子は、どんな集団指導塾に行ってもほとんど成績は変わらないです。
――レベル別にクラスが分かれている場合でも、ですか?
大体の塾は国算理社の4教科の平均点でクラスが分けられます。ですから、算数はできるけれど、国語がからっきしという子どもは、二つの教科の中間レベルのクラスに入れられてしまう。そうするとやはり国語でギャップを感じると思います。
――個々の国語のスタートラインの違いを理解してあげることが大事なのですね。
国語の成績を伸ばす方法
――国語の「取り組み方と考え方」というお話がありましたが、これはどういうことですか?
国語の『取り組み方と考え方』は、国語を学習する上で必要な7つの要素を指しています。
これらは自転車に乗るときの身体能力のようなもの。習得するまでは大変かもしれませんが、習得さえすれば、頭で考えなくとも感覚的に問題を解くことができるようになります。
国語ができる子は、前述のような日々の無意識なトレーニングによって、すでに『何も考えずに自転車にスイスイ乗れる状態』。国語が苦手な子は、この7つを身につけることによって苦手を克服していきましょう。
――具体的にはどのような内容ですか?
私が考えるのはこの7つ。
1.いい加減戦略
2.バイキング戦略
3.主観戦略
4.構造化思考
5.仮説思考
6.相似思考
7.野党思考
全ての詳細は『国語の心得』を読んでいただければと思いますが、一部を紹介します。
例えば『バイキング戦略』。これはバイキング形式のレストランから名付けたのですが、バイキングでは自分の食べられる量を見通し、色々な料理を楽しめるように取捨選択しますよね。
国語の勉強(ここでは試験)も、これと同じ手法でやろうということ。
国語が苦手な子は、一つの問題に執着して結局ほとんどの問題を解けないまま試験が終わるというパターンに陥ることが多いのですが、分からないものは飛ばしてほかの問題に手を付ける、つまり優先順位を付けさせるんです。
問題に書いてあること全てを理解しようとしすぎない『いい加減戦略』も重要です。多少意味がわからない語句や漢字があっても気にせず読んで、全体の8割くらいを把握して問題に取り掛かろうということです。
勉強はトレードオフ
私は『勉強はトレードオフだ』ということを、入塾時に生徒にも保護者にも伝えています。苦手な子に回答のスピードと正確度の両方を求めることは難しいのです。
だからこそトレードオフの感覚を磨き、問題によって取り組み方を調整することによって『結局何も得られない(得点できない)』事態を避けることが大事だと考えています。
ちなみに国語が得意な子はこれも感覚で分かっています。苦手な子はこの中の何ができていないのか、何がわからないかをじっくり聞いて解決することで、力がついていきます。