党の綱領からはわからない「リアル」
――登場する議員たちはまさに多様性を訴え、弱者に寄り添った代弁者ばかり。なのに、そこからこの党の問題も浮き彫りになるという……。
私は今年で39歳になりますが、同世代の議員で共感できる方が多いんです。池内さおり元衆議院議員は、ジェンダーやLGBTQの問題でもとても期待されていますし、池川友一都議はツーブロック禁止の校則問題でメディアに取り上げられたり、お子さんも4人いてプライベートでも興味深かったり。
彼らを、簡単にナレーションで説明するのではなく、日々活動している姿から今の共産党を感じてもらいたいと思っています。
――やはり共産主義や党の綱領、理念といったものではなく、中にいる人間の言動でしか伝わらないものがありますね。
そう思います。60年間、一党員として地元の茨城で「赤旗」の訪問販売などで頑張ってきた木村勞(つとむ)さんや、宮城の山奥で誰が聞いているかわからない雪の中、演説してる吉田剛さんなど、自分が興味をもって撮るからこそ、浮き彫りになる「共産党99年のリアル」を残せればいいなと。
共産党の歴史も勉強しましたが、今作は志位委員長のインタビューをメインとした総括的な作り方ではなく、言いたいことや葛藤も含めて、現場で今、頑張っている若い世代を意識的に取り上げました。
――その中では、旧来の共産党のイメージ、すなわち与党である自民党が最も敵視し、嫌う存在であることのジレンマも痛切に描かれます。
自民党だけでなく、世間一般のアレルギーってすごくあるんだなとあらためて思いました。共産主義って、旧ソ連で失敗したイデオロギーでしょ、とか、昔のイメージが払拭されないまま、誤解されている部分もあります。そのあたりも共産党が抱えている問題として、考えてもらうきっかけになればいいなと。
――池内元衆議院議員が、自分の母親から「アカ(赤)に育てた覚えはない」といまだに受け入れられずにいる葛藤を語るシーンは衝撃でした。
地方出身で親世代の保守的な考え方というのか、そのお母さんが受けた苦しみを変えたいと思って本人は入党しているのに、一番理解されたい人からもされないという。それって共産党が受けてきた苦しみの最たるものだと思います。例えば党名はこのままでいいのかとか、そうした外部からの批判を含め、党は受け止める必要があるんじゃないかと思います。
僕自身は共産党員でもないし、選挙で必ず票を入れる政党というわけでもないですが、左派政党として応援したい気持ちや期待があるからこそ、色々な声を盛り込みたいと思いました。