「世界的業績」を生み出すアーティストはなにが違うのか? 「ひとりでの練習量」と「練習する時間帯」に秘密があった
何らかのことが「できる/できない」は天賦の才能によるもの、と考えている人は少なくないが、そこに異論を唱えるのが、20カ国以上で翻訳されたロングセラーの新装版『新版 究極の鍛錬』だ。モーツァルト、タイガー・ウッズなどの天才たちを研究した成果とともに、彼らに共通する要素「究極の鍛錬」を突き止めた本書より、1990年代初頭にベルリンで、バイオリニストを対象に行われた研究から世界的業績を生み出す人が持つ秘密を紹介する。
究極の鍛錬#2
累計の練習量と業績の関連性
何が上達の差をつくるのか?
その答えはそれまでの練習時間にあった。すべての被験者はバイオリンを始めてからこれまで、一週間あたり何時間練習していたか、年ごとの概算を出すように求められた。これによって研究者たちはこれまでの累積総練習時間をはじき出すことができるからだ。
結果は驚くほど明瞭だった。18歳に達するまで最上位のグループは平均で7410時間練習しており、2番目のグループは5301時間、3番目のグループは3420時間練習していた。これらの差異は統計的に大変意味のある違いだ。
加えて、この数字が示している意味はもっと深い。お気づきのとおり、累計の練習量が多いほどより業績が上げられるのだ。
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しかし、ここで次世代のアンネ=ゾフィー・ムターあるいはジョシュア・ベルをめざして国際的に活躍するソリストになろうと、18歳で決意した第3グループのバイオリニストの状況を想像してみよう。
しかしこのバイオリニストは、これまでにすでに自分の2倍以上の累積した練習量を積み上げている同年齢で最高のバイオリニストの実力と同等かあるいはそれ以上の能力を身につけなければならないのだ。
現状でもライバルの一人での練習時間は週あたり24時間で自分は9時間というはるかに少ない練習時間であるにもかかわらず、追いつくには彼らよりも長く練習しなければならないのだ。
老人になる前に追いつこうと思えば、何倍もの量に練習時間を増やさなければならない。そしてちょうど成人としての責任をもち、経済的にも自立を始める時期にこうした自らを消耗させる活動を行わなければならないのだ。
要するにこの若者が、今からバイオリンのソリストの世界に飛び込むことは理論上可能でも、事実上はほとんど不可能だということだ。こうした状況に内在している問題は、個人および組織にとっても大変重大なものになっているのだ。
文/ジョフ・コルヴァン
究極の鍛錬#1
2024/3/7
2,090円
442ページ
ISBN:978-4763141248
あなたも、努力が面白くなる!
世界的業績をあげる人々に共通する「究極の鍛錬」とは?
ニューヨークタイムズベストセラー! 20カ国以上で翻訳され、何年も読まれ続けるロングセラーの新版の登場です。モーツァルト、タイガー・ウッズ、ビル・ゲイツ、ジャック・ウェルチ、ウォーレン・バフェット……など天才たちを研究した成果がここに! あなたは、才能がない人間はハイパフォーマンスを上げられないと思っていませんか? しかし、抜きん出た成功の源泉は才能ではないのです。本書の著者ジョフ・コルヴァン氏は心理学の先端分野「達人研究(Expert study)」を手がかりに、ハイパフォーマンスを上げる人たちに共通する要素――「究極の鍛錬」――をつきとめました。本書でその内容が明らかに!
(目次)
第1章 世界的な業績を上げる人たちの謎
第2章 才能は過大評価されている
第3章 頭は良くなければならないのか
第4章 世界的な偉業を生み出す要因とは?
第5章 何が究極の鍛錬で何がそうではないのか
第6章 究極の鍛錬はどのように作用するのか
第7章 究極の鍛錬を日常に応用する
第8章 究極の鍛錬をビジネスに応用する
第9章 革命的なアイデアを生み出す
第10章 年齢と究極の鍛錬
第11章 情熱はどこからやってくるのか