累計の練習量と業績の関連性

何が上達の差をつくるのか?

その答えはそれまでの練習時間にあった。すべての被験者はバイオリンを始めてからこれまで、一週間あたり何時間練習していたか、年ごとの概算を出すように求められた。これによって研究者たちはこれまでの累積総練習時間をはじき出すことができるからだ。

結果は驚くほど明瞭だった。18歳に達するまで最上位のグループは平均で7410時間練習しており、2番目のグループは5301時間、3番目のグループは3420時間練習していた。これらの差異は統計的に大変意味のある違いだ。

加えて、この数字が示している意味はもっと深い。お気づきのとおり、累計の練習量が多いほどより業績が上げられるのだ。

「世界的業績」を生み出すアーティストはなにが違うのか? 「ひとりでの練習量」と「練習する時間帯」に秘密があった_4
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しかし、ここで次世代のアンネ=ゾフィー・ムターあるいはジョシュア・ベルをめざして国際的に活躍するソリストになろうと、18歳で決意した第3グループのバイオリニストの状況を想像してみよう。

しかしこのバイオリニストは、これまでにすでに自分の2倍以上の累積した練習量を積み上げている同年齢で最高のバイオリニストの実力と同等かあるいはそれ以上の能力を身につけなければならないのだ。

現状でもライバルの一人での練習時間は週あたり24時間で自分は9時間というはるかに少ない練習時間であるにもかかわらず、追いつくには彼らよりも長く練習しなければならないのだ。

老人になる前に追いつこうと思えば、何倍もの量に練習時間を増やさなければならない。そしてちょうど成人としての責任をもち、経済的にも自立を始める時期にこうした自らを消耗させる活動を行わなければならないのだ。

要するにこの若者が、今からバイオリンのソリストの世界に飛び込むことは理論上可能でも、事実上はほとんど不可能だということだ。こうした状況に内在している問題は、個人および組織にとっても大変重大なものになっているのだ。

文/ジョフ・コルヴァン

究極の鍛錬#1

新版 究極の鍛錬
ジョフ・コルヴァン
「世界的業績」を生み出すアーティストはなにが違うのか? 「ひとりでの練習量」と「練習する時間帯」に秘密があった_5
2024/3/7
2,090円
442ページ
ISBN:978-4763141248
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(目次)
第1章 世界的な業績を上げる人たちの謎
第2章 才能は過大評価されている
第3章 頭は良くなければならないのか
第4章 世界的な偉業を生み出す要因とは?
第5章 何が究極の鍛錬で何がそうではないのか
第6章 究極の鍛錬はどのように作用するのか
第7章 究極の鍛錬を日常に応用する
第8章 究極の鍛錬をビジネスに応用する
第9章 革命的なアイデアを生み出す
第10章 年齢と究極の鍛錬
第11章 情熱はどこからやってくるのか
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