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コミケともハロウィンとも違った独特な仮装式

まるで人気バラエティ番組「細かすぎて伝わらないモノマネ」のような、マニアックすぎて一般的には伝わらない仮装もカナビの卒業式には存在した。

卒業式がはじまる前の広場に幾何学的な出立ちでたたずんでいた卒業生・吉村多喜さん(23)はいう。

「これは設計で使う『3D CAD』ソフト上で誤操作すると出てくる表示画面なんです。まだ操作に慣れていないときにはよく目にしたもので…。思い出のフォルムなので卒業式の仮装はこれしかないと思っていました」

マニアックな表示画面に仮装した吉村多喜さん
マニアックな表示画面に仮装した吉村多喜さん

そんな吉村さんは卒業後はカメラメーカーのデザイナーになるという。

「震災で開催が危ぶまれた卒業・修了展も終えて就職も決まり、とにかくホッとしています。僕は福島県・郡山市出身で東日本大震災のときは家が崩れて引越ししました。今回の能登地震で、どの地域にいても被災はするし、震災を常に頭に入れて暮らしていかなければいけないと改めて感じました。卒業後は大学で学んだことを社会に還元していきたいです」

また、会場内で遠くから見てもとにかく目立っていたのが、縦笛を模した伊藤優汰さん(23)だ。なぜ笛なのかと思うが、そこにもカナビならではの理由があった。

ひときわ目立つ縦笛を模した伊藤優汰さん
ひときわ目立つ縦笛を模した伊藤優汰さん

「カナビの伝統として、1年生のときに4年生からあだ名をつけられるんです。僕はあだ名が『なめ笛』だったので、卒業式には笛になるしかないだろと。これは(卒業式当日の)今朝4時に早起きして作りました。ギリギリに追い込まれないと動けないタイプなので」

こんな大掛かりなものをわずか6~7時間で作ってしまうこと、卒業式の制作を当日までとりかからなかったことに驚くが、このおおらかさがカナビ生の特徴なのかもしれない。