それぞれの道を進む卒業生たち
また、卒業後は大学院に進む生徒もいる。友人と一緒に宇宙服の仮装をしていた佐藤あいさん(22)は「将来は作家になる」という。
「最後の晴れ舞台なので、自分が絶対にならないものはなんだと考えたときに、やはり宇宙飛行士だろうと。この卒業はひとつの区切り。大学院に進んでますます画力を上げて、いろんな人に私の絵を届けられる作家になりたいです」
また、卒業生の前向きなこの気持ちに、親たちもホッと胸を撫で下ろす。札幌から息子の門出を祝いに駆けつけたのは母のラトール旅子さんと父のスニールさん。ともにいるのは息子の榛士さん(22)だ。
「幼稚園のときから工作するのが好きな子だったんです。美大に入ってホッとしたと思ったら、あっという間の4年間でした。東京のIT企業に就職も決まり、子育てもひと段落しましたね」(母・旅子さん)
最後に卒業生の中には在学中に漫画家としてデビューした学生もいる。「少年ジャンプ+」の読切漫画『風の音を響かせて』でデビューした双葉ヤヒコさんだ。「一番好きなゲームなので」と任天堂の「星のカービィ」の仮装で参加した。
「学生としてさまざまな教科を学ぶうちに、デザイナーは自分には向かないことに気づきました。それで、もうひとつやりたかった漫画を、大学2年生の後半から描くようになったんです。デビュー作はまさに王道青春漫画です。これからも同じ路線で描いていきたいと思っています」
流行にも規定のルールにも左右されない思い思いの自由な発想で、自身が作品となった仮装卒業式。正月に発生した能登地震の影響で一時は開催も危ぶまれた門出の日はたくさんの笑顔のなかで幕を閉じた。
それぞれの行く先で幸がありますように!
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取材・文/河合桃子 撮影/集英社オンライン編集部