なぜ自民党は経済停滞の責任を問われない?

これに対して日本はどうだろうか?

4位転落は為替要因などによる一時的な現象にすぎず、経済的にさほど問題はないという反応が政界と経済界を中心に多く見受けられるという印象だ。また、実質GDPがマイナスになるなど、2023年の経済が縮小したことに言及したり、その理由・背景について議論することにもどこか及び腰に見える。

中でも日本とドイツの反応でもっとも異なるのは、政権の責任をどこまで問うかという点である。現ショルツ政権は前述したように戦後初の3党連立政権として発足したため、その運営がとても難しくなっている。

〈日独GDP逆転〉課題解決に向けて議論伯仲のドイツと、居直る日本。両国でまったく異なる「一喜一憂すべきでない」の深層にあるもの_3

とくに気候保護政策などで、ネオリベラルな自由民主党と左派色の強い緑の党では政策に大きなギャップがあり、すんなりと政策決定できないことがしばしばだ。

この状況をもたらしたのは有権者の選択の結果とはいえ、ショルツ政権がスムーズに政策決定できずにいることにドイツ国民は厳しい目を注いでいる。

一方、日本では30年以上にわたって経済が停滞しているにもかかわらず、長年政権の座にあった自民党の責任が問われることはほとんどない。

4位転落について、新藤義孝経済再生担当大臣は「長年続いた低成長やデフレが影響した形」と他人事のようなコメントしている。だが、これは誰が考えても長年、経済政策を担当してきた自民党政権の責任だろう。

さらに「4位転落は円安の問題だ」というコメントもよく聞かれるが、円安もアベノミクス「三本の矢」のひとつである「異次元の金融緩和」の結果であり、自民党の選択であったことは明らかだ。

自民党がトリクルダウンという言葉とともに、円安政策を進めたのは日本企業の輸出を増やすためだった。円安で輸出が拡大して企業が儲かれば、経済に波及して国内が豊かになるという説が喧伝された。

なるほど、円安政策で多くの輸出企業が歴史的な黒字を記録した。しかし、その富がしずくのように中小零細企業や貧困層に滴り落ちることはなく、今ではトリクルダウン説は神話にすぎなかったと誰もが知っている。

国民の収入水準も年収、最低賃金ともに欧米諸国に大きく見劣りし、民主党政権の一時期を除き、ここ20~30年間ほとんど横ばいだ。厚労省の発表でも2023年の実質賃金は前年比マイナス2.5%という体たらくである。

また、格差も拡がり、今後さらに進むだろう物価高騰の前にさらに家計は圧迫されることだろう。

日本の経済低迷の要因として、効率の低さも指摘されている。IMD(国際経営開発研究所)の「国際競争力ランキング2023」によれば、日本の経営効率は世界64カ国中35位と過去最低記録を更新している。

だが、これもやはり、アベノミクスのもう一本の矢であったはずの「構造改革」を安倍政権が進めなかった結果だろう。なのに、日本ではGDP4位転落のニュースを前にしても、こうした政権の責任を問う声はさほど聞かれない。ドイツとはあまりに対照的だ。