「健康診断・がん検診を受けない老親」の
病気予防の鍵

老親の健康状態を心配し、健康診断の受診を勧めている子供世代も多いかもしれません。しかしながら、「健康診断を受けたからといって長生きできるわけではない」という視点を118ページでもご紹介しました。職場などでの定期健康診断が当たり前になってから50年くらい経ちますが、その間、健診を受け続けてきたのが、今の80代の男性です。言わば、「健診の走り」の世代で、この世代の男性は健診(の内容や結果、信頼性など)を絶対視する傾向が強いと感じています。

一方、今の80代の女性は専業主婦やパート勤務が多く、職場などでの定期健康診断はそもそも受けてこなかった人のほうが多い。

先述のように、もし健康診断を受けることが長生きに寄与するなら、男女の平均寿命の差は縮まるか、逆転していいはずなのに、定期的に健診を受けてきた男性よりも、受けてこなかった女性のほうが平均寿命が延びています。

つまり、長生きには健診が意味をなしていないといえそうです。たしかに、健診はがんの早期発見・早期治療などにつながることはありますが、歳を重ねた70代、80代以降の場合はがんの進行も遅く、そうしたメリットが減じてしまうのが実情です。

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健診での「正常」「異常」の判定とは

また、健診では数値が「正常」か「異常」かを見ますが、この境界が問題です。健診の「正常」は多くの場合、年齢を考慮せずに平均値を中心に高低95%圏内の数値を示しています。「異常」はその数値から外れて、高すぎる場合や低すぎる場合に判定されます。

基本的に、誰しも高齢になれば検査データで異常値が出やすくなるはずです。しかし、それがそのまま病気につながるかどうかは、実は医者にもわかりません。正常値で病気になる人もいれば、異常値でも病気にならない人もいるからです。

数値は本来、人それぞれで、年齢や性別、体型はもちろん、体質や環境、職業によっても変わってきます。数値が悪いからといって正常値に近づけるよう薬をのみ始めたらどうなるか。それまでの健康が損なわれるリスクが高まる可能性もあるのです。

また、「将来の病気の予防のため」に実施する健康診断ですが、歳をとればとるほど、意味が薄れていく、という現実もあります。どういうことか、一例を挙げましょう。