田んぼや沼地に、
ろくな地盤改良工事も
施されることなく造成

しかし秋住の分譲地はそのほとんどが、元は軟弱地盤の田んぼや沼地に、ろくな地盤改良工事も施されることなく造成されているもので、結果としてそれが地盤沈下などの被害を引き起こした主要因となった。

1990年ともなれば、すでに旧山武町においても投機型分譲地の開発ラッシュが吹き荒れた後の時代で、当時の地価を考えても、デベロッパーとしての参入は遅かったと言わざるを得ない。秋住がどのような手法をもって旧山武町での用地買収に動いたのかはわからないが、早いところでは70年代初頭から開発の手が伸びていた同町においては、すでに良質な開発用地の確保は困難になっていたのではないだろうか。

実際、国土地理院が公開している地理院地図の色別標高図を見れば、秋住の分譲地が、周囲と比較して明らかに低地に開発されたものであることはすぐにわかる。地盤沈下が特に激しかった市内某所のある分譲地には、基礎が大きく浮き上がり、建物には亀裂が入り、既に基礎そのものまでもが損壊している空き家が今も残されている。

知られざる限界分譲地のトラブル。沼地を開発した第三セクター・秋住事件の顛末と、今なお続く難ある土地の宅地開発とは_2
写真はイメージです

浮き上がった基礎と地面の隙間には土囊袋を置いて塞いだり、あとから継ぎ足すかのように基礎の補修を施した形跡はあるのだが、沈下はなおも止まらなかった模様がうかがえる。

事件発覚当時、秋住の建売住宅の補修工事に赴いた建築事務所の代表者が記したブログによれば、湿気の多い軟弱地盤であるために、近隣道路に大型車が通るたびに建物は大きく振動し、床下は湿気がひどくカビが多く発生していたとのことであった。

秋住の分譲地を歩くと、開発からまだ30年ほどしか経過していない割には空き家が目立つ。周辺地域では今も事件を記憶する住民が多数いるので、ただでさえ地価の下落が大きい旧山武町内においては、秋住の分譲地の物件はどうしても価格が安くなるためであろうか。

ある地元業者が、秋住の分譲地の中古住宅を広告に出していたことがあるが、その広告には、告知事項として秋住の施工であることが明記されていたほどだ。仮に伏せたところで、周囲を見れば今でも被害の跡が生々しく残るところがあるので、少し下見や下調べをすればすぐにわかってしまう。