慣れないエリアへの統合で「そのうち事故を起こすよ」と退職者も

こうしてセンターの集約化によって去年6月に引き起こされたのが、都内のある主管で起きた大量退職。およそ20人以上の正社員が一斉に自主退職して深刻な人出不足に陥り、8月には都内全域から応援が駆けつける事態に発展した。

応援に駆り出された首都圏在住の40代の正社員男性は当時をこう振り返る。

「自分は早朝に電車に乗ってヘルプに駆けつけたんですけど、なかにはビジネスホテルに前泊した社員もいました。現場の主管のドライバーに聞くかぎり、やはり一番の原因に挙げられるのがCDだったそうで……。

無理やり異動させられたドライバーが『ふざけんな』と怒り、同業他社や別業種に転職するために大量に自主退職したとのことでした。そもそも同じ主管で一斉に何十人も辞めるなんて聞いたことがないし、その人員を埋めるために今度は委託業者がメインになるらしいです。まさに本末転倒って感じですよね」

クロネコヤマトの営業所(撮影/集英社オンライン)
クロネコヤマトの営業所(撮影/集英社オンライン)

また、江東区の営業所で正社員として働いている男性からはこんな声が聞こえてきた。

「センターの集約化によって、中央区のほとんどの営業所と江東区の一部の営業所が有明にある大型のセンターに統合したのですが、これが現場からは批判の嵐です。中央区は交通量が多いこともあり、ドライバー全員がトラックではなく台車で荷物を運ぶというスタイルで『台車センター』と呼ばれていました。
しかし、有明のセンターに統合されたことで、中央区までトラックで配送しなくてはならなくなったんです」

中央区のドライバーは長年トラックに乗っていないペーパードライバーがほとんどだったため、本社は千葉県の教習所で講習会を開いたという。だが、現場がそれで納得するわけがない。

「運転に慣れてない人にいきなり『2トントラックを運転しろ』というのは無理があります。中央区は銀座などもあって交通量がハンパないし、パーキングエリアなんて簡単に見つからない。なので、中央区のドライバーは『そのうち事故を起こすよ』と不安を口にしていて、もう4、5人は辞めてますよ」

(撮影/集英社オンライン)
(撮影/集英社オンライン)
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大パニック状態の現場だが、この件についてヤマト本社に問い合わせると、以下のような回答があった。

「いずれのご質問も個別の事案のため、回答は差し控えさせていただきます。当社は、EC化の進展やお客さまのニーズ・流通構造の変化など、社会・市場環境の変化に対応するため、ネットワーク全体の品質・効率性の向上に取り組んでいます。また、『2024年問題』など物流業界が抱える社会課題の解決に貢献し、持続可能な物流サービスの実現に向けて、日本郵政グループとの協業をはじめ、さまざまな取り組みを進めています」

本社に振り回される現場の従業員たち。そして止まらない人材の流出。いくら大手配送サービス会社とはいえ、人材までも他社へ送り届けしまうとは皮肉な話だ。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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