「早くカタがついて欲しいというのが正直なところだよ」

特捜部の捜査リストに名前が上がらず、今回の問題では、比較的ダメージが小さいとみられている茂木敏充幹事長率いる茂木派(平成研究会)の中でも危機感は広がっていた。

「うちの場合、日歯連事件で政治資金では痛い目に遭っているから、派閥へのカネの『入り』と『出』については、きっちりと収支報告書に記載するようにしていた。パーティーのノルマ超過分の戻しは派閥からの寄付という形で処理していたが、それもキックバックといわれるとはなはだイメージが悪い。早くカタがついて欲しいというのが正直なところだよ」と声を潜めるのは、同派のある中堅議員だ。

「どんだけチョロまかしたんだ…」とツッコミたくなる修正をした安倍派・池田佳隆容疑者の収支報告(池田容疑者の収支報告書より)
「どんだけチョロまかしたんだ…」とツッコミたくなる修正をした安倍派・池田佳隆容疑者の収支報告(池田容疑者の収支報告書より)

日歯連事件とは2004年に発覚した疑獄事件。日本歯科医師連盟での汚職事件に端を発し、橋本龍太郎元首相ら平成研の幹部に日本歯科医師会側から1億円がヤミ献金として流れていたことが発覚し、会長の橋本氏の辞任に発展するなど、同派は壊滅的な打撃を受けた。

当時と同じように政権への逆風が強まるなか、岸田首相は昨年12月14日に松野氏をはじめとする安倍派の4閣僚を交代させる人事を断行し、局面打開を図った。このころには特捜部の捜査の狙いが徐々に明らかになってきていた。

「安倍派で危ないのは10人、と具体的な数字も出るようになった。内訳は安倍派の事務総長経験者に加えて、不記載のキックバックが4000万円以上の高額になる議員だ、と一斉に情報が回りました。同じタイミングで浮上したのが、『不記載を認めないと身柄を取られることもあり得る』という噂。いま思えば特定の議員への警告の意味合いも込めて検察がリークした情報だった気もしますが…」(前出の政治部記者)

池田佳隆容疑者
池田佳隆容疑者
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衆院議員の池田佳隆容疑者(57)の周辺が騒がしくなったのもこのころだ。特捜部は1月7日、池田容疑者らを政治資金規正法違反(虚偽記載)の疑いで逮捕。キックバックを受けた資金に関する証拠隠滅を図るなど悪あがきを続けた末に、在宅起訴が通例とされるなかで「異例」ともいえる身柄拘束に至ったのである。