「完璧に壊れてますよ」「オンナもホストも終わっとる」
意味不明の理由をこじつけてきた時点で、A氏は作り話と見破った。
「阿部さんは携帯ゲームがすごく好きで、常に携帯を右手に持ってるような人なんですよ。だからそれもふまえて『ずっと携帯にさわれないなんておかしいだろ。とりあえず今日は無理だから、月曜日に阿部さんの家に行きます』と伝えました。
そんなやり取りしてたら、阿部さんのなりすましLINEから『急遽、父親が倒れて岩手に行くことになった、すまん』みたいなメッセージが来たんですよ。さすがにおかしいんで『お前なんかやったやろ』と内田を問いただすと『本当に私何もわからないんですよ』と口ごもる。そういうくだりが何回も続きました」
だが、徐々に追い詰められた内田容疑者は、しだいにボロを出し始めた。
「そもそもは阿部さんとの関係は『手伝ってる者です』みたいな感じ言ってましたけど、そんな従業員はこれまで見たことなかったから、『もしかして阿部さんの家に行ったりしてた?』って聞くと『行ってました』と白状したんです。阿部さんからは以前、『自宅に出入りしている女に、保管していた買取品の貴金属や商品券を盗まれて売りさばかれた』と聞いていたので、こいつが盗みをしてた女だなと思いました。
もし阿部さんが生きているとすれば、店の鍵やセコムカードとかをその女に預けたってことじゃないですか。盗みをされてるのにそんなことするわけないから、僕は周りに『阿部さん多分、あの女に殺されとるぞ』って言ってたんだけど、誰も取り合ってくれなくて…」
阿部さんと内田容疑者の最初の接点はキャバクラだったようだ。8年ほど前、結婚を機にいったんキャバ嬢を「引退」した内田容疑者が、栄あたりで特定のキャバクラには所属せずに体験入店を繰り返していたころ阿部さんと知り合ったという。
「阿部さんは内田のことを『ただの嘘つきだ』とも言ってました。カネの使い道を阿部さんが聞くと『お母さんに渡した』と言い、母親を名乗る女性から電話があったので『お母さんは何に遣ったんですか』と問い詰めると『宗教に寄付した』と言い出したと。
だから『あそこの家族ぶっ飛んどる』って阿部さんは愚痴ってました。そもそも電話してきた『母親』というのも本物かどうかあやしい。というのも内田はホストにめちゃくちゃ金を遣ってたんですよ」
徐々にめくれてくる正体に気づいたA氏が、ホスト関係者に噂を聞いて問い詰めると、自ら白状したという。
「音信不通になったら困るので内田とはあの手この手で連絡を続けてたんです。逮捕される何日か前にも『男(ホスト)が浮気してたんですけど、どう思いますか?』って相談みたいなこともしてくるんですよ。多分気軽に連絡取れるような関係の人がもう全然いなかったんだと思うんだけど、ぶっ飛んでますよね」
その相談内容も聞いて呆れるようなものだったという。
「浮気をされたのがいつとは言ってなかったけど、『彼氏がマリオットホテルを取ってくれて私は夕方からチェックインして待ってたんです、だけど全然来なくて連絡しても友達とまだ用事って返ってくるんです、結局来たのが夜の12時くらいなんですよ。
それで何をしてたのか問いただしたらキャバ嬢を家に連れてきてゲームをしてて、そのうち野球拳が始まって体の関係になっちゃったって。でも全然エッチはしたくなかったって男は言ってるんですけど、どう思いますか?』みたいな内容でした。完璧に壊れてますよ。その相談に関しては『お前もそいつも終わっとる』と返しました」