2021年後半から「新型コロナは健康な若年者にとっては普通の風邪であり、5類相当にすべき」の意見
ところが日本では、2020年1月に感染症法で「指定感染症」とされてから2023年5月7日まで、新型コロナの感染症法上の位置付けは結核や重症急性呼吸器症候群(SARS)並みに危険度が高い「2類相当」とされ、感染者を病院などに強制隔離する政策が取り続けられた。
濃厚接触者の概念は、徐々に狭まったものの、新型コロナ感染拡大が始まった当初は、陽性になったら隔離され、同居の家族や職場の同じ部署の人たちも濃厚接触者としてしばらく出勤できなくなった。
医療関係者にも濃厚接触者が多数出て、そのために患者を受け入れられなかったり、受け入れ人数を減らしたりした医療機関も少なくなかった。
ちなみに、日本の感染症法では、感染力と罹患した場合の重篤性等に基づく総合的な観点から見た危険性の程度に応じて、感染症を1類から5類まで5つに分類している。
1類はエボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、ペストなど極めて危険な感染症、2類は、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)、急性灰白髄炎(ポリオ)、結核など。
3類にはコレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌(O157など)感染症、4類には狂犬病、デング熱などが含まれる。
この分類に含まれない「指定感染症」は、既に知られている感染症であって1~3類と同等の扱い、つまり、全て届け出が必要で、感染者を病院に強制隔離すべき感染症と位置付けられている。
指定感染症の指定期限は2年なので、新型コロナは途中で、全国的かつ急速な蔓延により国民の生命及び健康に重大な影響を与える恐れがある「新型インフルエンザ等感染症」に変更された。
言葉がややこしいが、季節性インフルエンザとは別格で、感染症法では隔離が必要な感染症(2類相当)に位置付けられていた。
すでに2021年後半から、一部の医療関係者からは、「新型コロナは健康な若年者にとっては普通の風邪であり、5類相当にすべき」との意見が出始めていた。
なぜなら、それほど重症ではない患者も多かったにもかかわらず、「2類相当」となっている限り、隔離を患者に強いて、さらに病院としても、新型コロナ患者と別の病気の患者の動線を完全に分けなければならなかったケースが多かったからだ。これは現実的でない。
また、症状はなくても「濃厚接触者」の烙印を押された看護師や医師、事務員などが(時期によって異なるが)10日間休まなければならない事態になり、人手不足で診療を縮小せざるを得ない医療機関も多かった。
5類であれば、季節性インフルエンザ、はしかなどと同じで、患者数の全数把握が必要なく、隔離はもちろん、重症にならない限り入院も必要ない。通常の保険診療で対応できる。