努力する天才捕手、琉球のスラッガー

集英社の野球マンガでスタメン組んでみた(前編)最速200キロ投手、天才勝負師、智将、琉球の大砲、さすらいの賭博師_3
©みかわ絵子/集英社

■捕手:『忘却バッテリー』より、要圭
※「ジャンプ+」2018年4月26日~、隔週木曜日掲載で連載中(既刊13巻)/みかわ絵子

中学硬式野球界で名を馳せた天才投手、清峰葉流火。その相棒であり、“智将”の異名を持つキャッチャーが要圭だ。

「野球×記憶喪失」を切り口とした高校野球マンガ『忘却バッテリー』。中学時代は冷静沈着なリードでチームを勝利に導く天才キャッチャーだったが、記憶喪失により野球に関するあらゆる知識と興味を失ってしまった要。野球を失ってしまうと、ただのお調子者になってしまうというギャップも魅力のキャラクターといえる。

「二階堂の200キロのストレートを誰ならば捕れるのか、というのは大変な問題。“智将”要圭であれば、そのストイックな性格から、努力で克服できるのでは……という期待感があります」(ツクイ)

記憶を失っていても、体はキャッチャーとしての基本動作を覚えていた要。それは、尋常ではない努力と執念によって手にした後天的なものだからこそ。そんな「実は熱血」な点も本作の魅力であり、要圭の魅力といえる。

作者のみかわ絵子は、「となりのヤングジャンプ」で『BUNGO-ブンゴ-』の作者二宮裕次との対談において、「(連載前は)野球の絵とか漫画はすごく好きなんですけど、あまり試合を観たりすることはありませんでした」と明かしている。

この話を受け、二宮は「スポーツに興味ない人でも読んでもらえるにはどうしたらいいかを、一番適したやり方でやっていらっしゃる」と解説。野球に詳しくない人でも読みやすい作品であるのは間違いない。

集英社の野球マンガでスタメン組んでみた(前編)最速200キロ投手、天才勝負師、智将、琉球の大砲、さすらいの賭博師_4
©なかいま強/集英社

■一塁手:『わたるがぴゅん!』より、宮城正
※「月刊少年ジャンプ」1984年8月号~2004年10月号連載(全58巻)/なかいま強

「がっぱい」という沖縄の方言が代名詞だった宮城正。20年間連載が続いた「月刊少年ジャンプ」の看板作品『わたるがぴゅん!』の重要なキャラクターだ。その主人公で沖縄出身の天才野球児・与那覇わたるとは沖縄時代からの腐れ縁で、14歳とは思えない怪力で豪快なホームランを連発する怪物スラッガーだった。

「宮城が持つ最大の魅力は、なんといっても意外性。長打力を生かしてクリーンナップを打たせてもよし。“恐怖の下位打線”として相手バッテリーに脅威を与えても面白そうです」(ツクイ)

東京にある東和台中学校野球部へ、沖縄からわざわざ転入してまで入った動機は、わたると喧嘩するため。宮城は野球の基本的なルールも知らないまま野球を続けていったが、マスコットバットを普通のバットと同じように軽々と扱う腕力を武器に放つ特大アーチは、何度も試合の流れを変える起爆剤となった。

ちなみに、沖縄の方言の「がっぱい」とは「後頭部が大きい」という意味。宮城の後頭部はまさに「がっぱい」状態で、キャップは後ろ半分を切り取ってゴムバンドを縫いつけたもの、バッターヘルメットは後ろ半分を叩き割ったものを使用。本人がこの「がっぱい」頭を誇りに思っているのも印象的なキャラクターだった。