同級生の竹下幸之介、そしてプロレスとの出会い
男子が少ない高校だったため、クラスの分け隔てなく、男子で集まるようになった。昼休みにサッカーをしたり、昼ご飯を一緒に食べたり。2年生のときに仲間のうちの一人がプロレスラーとしてデビューすることになった。現在、米国AEWとDDT、2つの団体に所属する竹下幸之介だ。
仲間たちとDDT大阪大会に応援に行くことになった。プロレスを観たことがなかった上野は、会場に行く道中、ルールを教えてもらった。どんな競技かもわからなかったが「屈強な男たちが闘っている世界」という漠然としたイメージだけがあった。
そんな状態で観戦したプロレスに、彼は瞬時にハマった。
「なにもかもが面白かった。迫力もすごかったし、選手全員が一生懸命でした。『全力である』という部分が、僕にはすごく衝撃的だったんですよね。選手の名前もわからないから『怖そうな人』とか漠然とした記憶なんだけど、プロレスラーのむき出しのなにかがダイレクトに自分に刺さりました」
それまでなにかに夢中になったり、燃え上がったことはなかった。陸上も器械体操も楽しかったが、あくまで競技としての楽しさだった。しかしプロレスを観ていると、心の底から熱くなるものがある。自分にそんな心があることに驚いた。
頭のいい上野は、人が考えていることを瞬時に察知できるタイプだ。だれかが暗い顔をしていると「こんなことで悩んでいるんだろう」と理解し、優しい言葉をかけることができる。しかし、人の感情を自分に置き換えて感じることが苦手だった。卒業式で涙を流したことは一度もない。
「皮を被っていたというか、取り繕っていたというか。子供のころの『自分は人と違う』という感覚からくる自己防衛だったと思います。それがプロレスと出会って、ありのままの自分を解放できるようになりました」