チャレンジは早いほどいい
「もう少し力をつけてから……」。そうやって憧れの仕事を先送りしてしまう人がいる。それはとてももったいないと佐久間は綴っている。
「どれだけキャリアを積んだところで『よし、十分、力がついた』とはなかなかならない。それにどんなチャレンジも、早いときほど失うものは少ないし、むしろ得ることのほうが多い」「ダメ元で無謀なオファーや挙手をして断られたとしても、そこには『相手の記憶に残る』というメリットが残る」と。
実際、藤井も最初に手掛けた『限度ヲ知レ』で大御所放送作家の高須光聖に声をかけ、一緒に仕事をしている。のちに「まったく面識がなかったADから話が来たときはうれしかった」と言われたことを明かしている。
自分の「ブランド」を作るには
そうした実践の中で2人は「自分」を知り、それを周囲に伝えることの大切さを説いている。そして、何よりも2人に共通しているのは、「ダサいことはしたくない」という強い思いだ。藤井はディレクター時代、自分なりに正解の編集をしていたにもかかわらず、上司に直せと言われ「嫌だ」と拒否。周囲の作家も藤井の意見に乗ったが、結局、勝手に直されてしまったという。
その時、藤井は珍しく感情的になり、スタジオ収録に行かなかった。「そういう、ダサく見られたくない、つまらなく見られたくないって感覚は昔からずっとある」と。だから現在は、映像のチョイス、テロップ、ナレーションに至るまで、ギリギリまで自分自身でこだわり続ける。
佐久間も同様だ。「少なくとも世に出る部分は、すべて自分でクオリティコントロールしたい」と、通常なら番組演出は出席しない宣伝や販促の会議にまで参加しているという。そんなこだわりが「ブランド」となっていく。
お互い「天才」ではないという2人の考え抜かれた「ずるさ」は、僕のような凡人にも参考になるものばかりだ。だからこそ、そこから生まれる唯一無二の「悪企(わるだくみ)」の凄さをより実感することができるのだ。