「星」を急激に下げた食べログ運営会社に店に対して3840万円の賠償命令。なぜグルメ雑誌・サイトは信用ならないのか「九州の人はバリ固ラーメンをさほど頼まない」
SNSやネット世論と向き合わずに生きていくのが難しいこの時代に、他者の意見に敬意を払うこととそれに流されがちなこととは紙一重だったりする。はたして自分の頭でちゃんと考えたことはあるのだろうか。『週刊新潮』の連載「この連載はミスリードです」(2022年5月〜23年6月)や「デイリー新調」(23年5月配信)を加筆・修正しまとめた『過剰反応な人たち』 (新潮新書)より、一部抜粋・再構成してお届けする。
『過剰反応な人たち』#3
味の素とドライビールを徹底的に批判する美味しんぼ
食に関しては権威が作った流儀が横行する空気感があります。たとえば、グルメ漫画『美味しんぼ』では企業名を名指しはしていないものの「味の素」と「ドライビール」を徹底的に批判しています。
しかし、正直、私のような素人料理人からすれば味の素は日々の料理をとんでもなくおいしくしてくれます。アサヒスーパードライだって、今となっては一番好きなビールになっています。
権威とされて祭り上げられた人々は自身の思想に従って様々なものを批判し、それらを礼賛する人間をバカ扱いしますが、スーパードライが好きで味の素を使う人間を徹底的に「バカ舌」扱いするってどうなんですかね?
「微妙なダシの味が分かる人間こそ至高!」的論説はありますが、別に味の好き嫌いなんて個々人の好みの差でしかないでしょ? タイ人が辛いものが好きだったり、中東の人がスパイスたっぷりの料理を好むようなもの。本当に私は「レッテル貼り」ってヤツがとことん嫌いです。なんで「○○を使うヤツはバカ」「〇〇を料理に使うヤツは味音痴」なんてことを勝手に決めつけるのか。
いい加減にしろ。権威どもが勝手に決めたことに従ってきた日本、別にこの30年何も良くなっていないでしょ。だったら権威が言うことには反発していいのです。権威様なんて我々の人生に何ものをももたらさない。だったら、さっさとこいつらを無視する人生を送るべきなのです。ラーメンの「バリ固」も不要です。(2022/07/14)
◇一説には、バリ固の麺には伸びやすい、コシがない、スープが絡みにくい……などの特徴があると指摘されています。「バリ固帝国」に無意識に洗脳されているかもしれないと思って、次回は柔らかめにトライしてみては?
文/中川淳一郎 写真/shutterstok
#1『「レジ袋は必要ですか?」レジ袋有料化の裏で”大量の産業廃棄物”となる飛沫防止アクリル板…なんかおかしい? 「フィーリング環境活動」』はこちらから
#2『「コオロギ憎けりゃ太郎まで…」別に悪いことしているわけでもないのに敷島製パン「コオロギ粉末入りパン」を大炎上させた”日本人の空気感”』はこちらから
『過剰反応な人たち』 (新潮新書)
中川淳一郎 (著)
2023/9/19
¥836
192ページ
ISBN:978-4106110108
人間とはいかに愚かで、「自分だけが正しくて他人は全員無能」と考えているか――。本書は、コロナを含めて折々の社会の空気感を取り上げ、それにまどわされる過剰反応な人たちがどれほど多いのかについて克明に綴った記録だ。著者はコロナ騒動が始まってからの3年余を、「壮大なるパニック実験」だったと振り返る。では、過剰反応な人たちの見本市へようこそ。
「考えることよりリアクションが最優先」
そんな残念な日本人の記録
コンプラ・ポリコレこそ絶対、エコ・SDGsこそ至上価値
節操のないメディア、騒々しいネット世論、不倫はすべて許すまじNG
…そんな関わると面倒くさい、過剰反応な人たちを集めてみました。
【目次】
PARTⅠ それって過剰反応では
ニューノーマルという時の流れ/美観を汚す環境テロへの「?」/ガイドラインゆえの手ごわさ/盆踊りは「邪教のミサ」か/コオロギ憎けりゃ太郎まで…/第何波までやるつもり?/迫害され続けた「祭り」/日本の過保護をガイジンと笑った一夜
PARTⅡ コンプラ全盛時代の違和感
セクハラ香川が謝るべきは/『週刊ポスト』のエロ漫画/アホな校則が国を滅ぼす/ツイッターのIDが凍結されて/オブラートに包まれた言葉/「わたしの川柳コンクール」雑感
PARTⅢ 節操のないメディア
何でも答えてしまうから専門家/死してなお「アベ反対」の人々/野党とともに風見鶏のごとく/「戦犯」たちの屁理屈と炎上騒ぎ/専門バカたちの苦しい言いわけ/一体いつまで「食べログ」信仰/「権威」を無視する人生
PARTⅣ マスクゾンビ国家からの逃亡
感染対策マニアにもううんざり/旅の終わりに/ホタルイカでもマウンティング/バンコクからドヤ顔で現況を/異邦人として生きる心地よさ/不要不急のコロナ対策はなお続く/ホント、「異常な3年間」でした
PARTⅤ ビックリ事件簿
「配達するのが面倒だった」郵便局員/「なぜその発想に至ったか」がわからない/特殊詐欺、「ウマい話」は大抵ハズレ/「計3点で時価2200円」のトホホ感/「サンマ」は日本人だけの楽しみだったのに/「側溝のフタ外され」事故で思い出すこと/大地震の予兆への「またか」感
PARTⅥ 可もなく不可もなし
「検討使」時代の岸田首相/下着2枚を重ね着したころ/お決まりの定型句を疑う/何でもいい、役割があれば…/機内食廃止への妥当な感じ/「辛くない」「次は辛く」の攻防/「異物除去マニア」垂涎のひと時/助っ人ガイジン悲喜こもごも/ご存じですか?「大谷翔平は直江」
PARTⅦ ラクに生きよう
自分なりの「法則」を作る/長文の悪夢にうなされる夜/脳にも休みは必要です/苦痛を正当化するのはやめよう/「昭和オッサンムード」の心地よさ/「生きづらさ」と繊細さ/マウンティングなき世界で