森保ジャパンとビジャレアルの共通点
スペイン人監督ウナイ・エメリが率いるビジャレアルはCL準々決勝、バイエルンと戦っている。ドイツ代表5人を揃えた一昨シーズンの欧州王者に、ファーストレグは本拠地で1-0と勝利。敵地でのセカンドレグは1-1で勝ち上がった。この2試合は、エメリ・ビジャレアルを象徴していた。
ファーストレグは21本のシュートを浴び、守勢に回る時間は長かった。戦力的劣勢は明白だったが、完璧に崩されたシーンはほとんどない。4-4-2で構成したDF、MF、FWのラインが緊密に連携を取って、スペースを与えず、自由を奪った。各々が「持ち場を守る」という意識を徹底することで、最悪を回避していた。
攻守にわたって、ポジション的優位が徹底。準備の段階で相手よりもいい位置取りをし、連係できる相互関係を保ち、局面によける戦闘力も顕著だった。単純に「球際の戦いを制する」「相手をブロックする」「選択肢を狭める」を繰り返した。エメリは肉体的な献身、プレーインテンシティを重要視している。
例えば左サイドには、本来はボランチのフランシス・コクランを起用し、プレー強度を高めているし、右サイドバックはセンターバックでマーキングや高さに優れたフォイを抜擢。サイドバックをサイドMFで使う起用法も一つで、まずは城門を閉じた。国内リーグでは、スピードやトリッキーなドリブルが持ち味の選手も使うが、勝負所の戦いでは強度を重んじている。
森保ジャパンがビジャレアルと似ている色合いとしては、負けないための算段で作られている点にあるだろう。森保監督も、前線では伊東純也のようにスピードがあってカウンターで力を発揮する選手、南野拓実や原口元気のようにプレー強度(インテンシティ)が出せる選手を好む。中盤では防御力を高めるため、遠藤航のアンカーを採用。ディフェンスには安定したパフォーマンスを期待し、吉田麻也や長友佑都のように経験に重きを置いた起用が多い。
システムは4-3-3と違うが、理念は近い。アクシデントが起こる可能性をできるだけ小さくし、あるいは起こっても被害を最小限にする手はずを整えている。相手の良さを消しながら逆を取る。過去の日本代表では、2010年南アフリカW杯、岡田武史監督が率いたチームに近い。石橋を叩いて渡る、堅実さだ。
つまり、森保ジャパンがエメリ・ビジャレアルから吸収すべきことは多いと言えるだろう。これは2020-21シーズンに久保建英がビジャレアルに半年間レンタルで在籍するも定着できなかった理由につながり、同時に森保ジャパンの解析にも結び付くかもしれない。