高齢化社会への対応

社会の高齢化を反映し、公営競技場や専用場外発売所は高齢者の居場所にもなっている。

ナイター開催では比較的客層は若返るが、昼間は高齢者の占める比率が高い。特に、競輪や地方競馬ではその傾向が著しい。
 
予想紙のデータを読み解き、自らの記憶力と計算力を駆使し、選手や馬に声援( 罵声も含め)を送り、場内を歩き回り、同好の士と語りあうことは、高齢者の心身の健康に良いのではなかろうか。すべての高齢者が家族に恵まれ、孫の相手やゲートボールに興じたいわけではない。

公営競技に限らず、日本のほぼすべての産業で高齢化社会への対応が求められている。パチンコ大手のマルハンは23年4月に「デイサービス ラスベガス八千代」をオープンさせた。興味深い試みだ。

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デイサービスとまではいかないまでも、場外発売所のなかには、すでに高齢者向けの施設整備やサービスの提供をおこなっているところもある。

ネット投票が発売の中心となっている現在、その存在意義が薄れつつあるのが専用場外発売所だ。競技が投票の対象となる以上、競技をおこなう競技場がなくなることはないし、競技そのものを目の前で見たい、臨場感を味わいたい人がいなくなることもないだろう。

競技場でレースを生で観たい、声援を送りたいと思う人が少なからず存在するから、野球でもサッカーでもスタジアムに人が来る。それは競輪でも競馬でもオートレースでもボートレースでも同じだ。

専用場外発売所に集うファンはスマホやPCに馴染めない高齢者の比率が高いというが、これからの高齢者はPCもスマホも駆使する。

そうなると、わざわざ専用場外発売所に足を運ぶ意味がどこにあるだろうか。これまでのように、投票券を売ることだけでは専用場外発売所の存在意義はますます薄くなっていくことは必至だ。

それでは専用場外発売所はなくなってもいいのだろうか。投票券を発売するだけの役割しか果たさないなら、いずれ過去の遺物として姿を消さざるを得ないだろう。たとえ廃止されても、利便性のいい都市型施設なら跡地利用も容易だ。

では今後、専用場外発売所は不要かといえば必ずしもそうとは言えない。ネット投票から参入したファンでも、馴染むに連れて生の公営競技を楽しみたい人も出てくる。実際に馬や選手を走らせることはできないが、専用場外発売所を使って騎手や選手にふれあう機会を提供することは可能だ。競技場よりも至近距離でふれあうことができる。
 
特殊な例かもしれないが、オートレースの森且行選手が来場するイベントには多くの女性が集まる。SMAP脱退からすでに30年近く経っているがその人気は絶大だ。森のファンからオートレースのファンになった人も少なくない。

広い駐車場スペースのある郊外型施設なら、競技用の自転車やオートバイに触れたり、場合によっては乗ってみることも可能だ。水面を走ることは無理でも競走用ボートを実際に触ることはできる。

すでに一部の専用場外発売所では実現しているが、複数の競技の投票券を発売することで、同時に異なる競技を楽しむことも可能だ。イベントなどを組み合わせることで、新たなファンを生み出す契機ともなる。
 
さらに、郊外型施設には広い駐車場が用意されている。立地条件にもよるが、天災発生時の避難先や物資の流通拠点としての利用も一考すべきだろう。

ネット投票中心の公営競技界で、今後新たな専用場外発売所が開設されることはないだろうが、広報の拠点施設として、また、アンテナショップ的な役割を果たす施設として、専用場外発売所はまだまだ活用の余地があると筆者は考える。