副反応が怖くてワクチンを避けても、結局感染すれば同じような症状になってしまうのでは
mRNAワクチンは、ウイルスの設計図の一部を体内に注射し、ウイルスの一部を作らせ、それに対する抗体等を作ることで免疫をつける、という仕組みです。
このとき作られるウイルスの一部というのは、コロナウイルスのトゲトゲの部分です。スパイクタンパク質と呼ばれています。ワクチンで生成するのはこのようにウイルスの一部ですが、「本物」の一部ですから、その副反応も、「本物」に感染した際の症状と当然似通ってくるのでしょう。
副反応が怖くてワクチンを避けても、結局感染すれば同じような症状になってしまうのではないか、ということです。そして、特にオミクロン以降、感染力が桁違いになりましたので、感染せずに済ませるのは至難です。
ところで、ワクチン接種した上でコロナに感染した場合の「ハイブリッド免疫」の有効性が指摘されるようになっています。厚生労働省の資料を見ると、海外の論文(NiklasBobrovitzetal.1, Lancet Infect Dis 2023)を引用しつつ、次のようにまとめられています(太字は引用者)。
ハイブリッド免疫(新型コロナウイルス感染及びワクチン接種の両方により得られた免疫)による、1.2回目接種又は最終感染後12か月の入院又は重症化予防効果は97.4%、再感染予防効果は41.8%であった。
ハイブリッド免疫による、3回目接種又は最終感染後6か月の入院又は重症化予防効果は95.3%、再感染予防効果は46.5%であった。
ただ、この研究の対象は「2020年1月1日から2022年6月1日までに発表された文献」であり、アルファ株やデルタ株が流行していた時期が含まれているので、オミクロン株に対する有効性という点では割り引いて考える必要があります。
状況が急激に変化していくため、考えを固定化することが一番危険
いずれにせよ、これが本当であれば、ワクチンを打った上で感染するのが最良の選択ではないかと思ってしまいますが、基礎疾患のある人や高齢者にはリスクが高い手段でしょう。ただ、オミクロン以降の異常な感染力や、感染対策の緩みを考えると、自然と「ワクチンを打った後に感染する」という状況が増えていくのではと思います。
この厚生労働省の資料には、各国のワクチンの長期接種計画について「各国とも公衆衛生当局は未発表又は不確実な点が多いとしている」と書いてあります。
ワクチンについては、「状況に応じて考えを柔軟に変える」という姿勢が必須ではないかと思います。ワクチンによって獲得した免疫力は時間の経過と共にだんだん下がっていきます。
さらに、何度も感染している人がいることからも分かるとおり、感染によって獲得した免疫力もまた時間の経過によって下がっていきます。その上、ウイルスの方もあっという間に変異していきます。オミクロン株の異常な感染力を誰が想像できたでしょうか。
このように、状況が急激に変化していくため、考えを固定化することが一番危険です。従来の考えに固執せず、状況をありのままに見て考えを変えていくことが適切ではないかと思います。
文/明石順平 図版作成/小林美和子 写真/shutterstock
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