「マルチタスクに向いていない」=「目の前の作業に集中できる」
——弓月さんは実際にiPadをどのようなシーンで活用されているのでしょうか。
まず、簡単な動画編集です。これは、今年6月にiPad版「Final Cut Pro」が使えるようになったのが大きいですね。長尺の動画だったり、テロップをしっかり入力する必要がある場合はPCのほうが編集しやすいですが、ある程度のものならiPadだけで制作できます。
ほかには、イベント制作の仕事でもiPadを多用しています。たとえば会場を下見に行ったときは、まずiPadのカメラで会場の写真を撮り、それをノートアプリ「Goodnotes 6」に読み込んで、Apple Pencilで写真にメモを書き込んでいきます。
——同じことをPCでやろうとすると、なかなか大変ですよね。iPadなら、現場で立ったままでも作業できそうです。
はい。それにiPadなら、メモやラフを共有するのも簡単です。
たとえば、デザインのラフをスタッフに共有する場合、以前なら紙に書いてデスクに置き、メンバーで覗き込みながら、話し合うことができました。でも、PCだとそれが難しい。メールにデータを添付してメンバーに送って、それぞれのPCで開いて……と、コミュニケーションを取りながら仕事を進めるのに、ちょっとハードルが高いんです。
昔のように紙を全員で囲むような打ち合わせがデジタルでもできたらなと思っていたので、iPadが出てきたときは「これだ!」と確信して、初期の頃から仕事に取り入れていました。
——アイデアをまとめるために、弓月さんはどんなアプリを使っているんですか?
私が愛用しているのは「IdeaGrid for iPad」です。テキストや画像、手書きのイラストなどさまざまな形式で自由にアイデアを書き込んだメモを、ホワイトボードのようなスペースに付箋のように配置していく、というアプリです。
似たアイデアのメモを重ねて階層化したり、メモの大きさを変えて重要度を表現したり、メモを並べて一覧することで新たな気づきを得られたりと、アイデアをまとめるのにとても優れていますよ。
——弓月さんが、iPadを仕事道具に選ぶ理由は何なのでしょうか?
いろいろありますが、ひとつは「スピード感」だと思います。アイデアを思いついたときにすぐ作業できて、それを素早く相手と共有できるのは、PCでは実現できないiPadのアドバンテージです。
あと「マルチタスクに向いていない」ということは、逆にいえば「1つのタスクに集中できる」ということです。企画立案、イラスト制作、動画編集……何でもそうですが、目の前のタスクにじっくり向き合ってクリエイティビティをカタチにしていくには、iPadが最適なデバイスだと思います。
取材・文/山田井ユウキ