年金には国庫支出金が支出される
年金会計の収入には保険料のほかに国庫支出金と積立金運用収入がある。以下では、これらを考慮した場合の年金財政を考えることとしよう。
まず、各制度から基礎年金制度に対する拠出金の2分の1が国庫負担となる(従来は3分の1であったが、2004年度から段階的に引き上げられ、2009年度に2分の1となった)。
収入項目のうちの国庫支出金は、受給者の増大によって増えるわけだ。
厚生年金の場合、2020年度において、経常収入(積立金運用益を除く収入をこのように呼ぶこととする)が約47.2兆円、そのうち保険料収入が約32.1兆円、国庫支出金(国庫・公経済負担)が約10.1兆円だ(厚生労働省、「公的年金各制度の財政収支状況」による)。
厚生年金から拠出金を基礎年金勘定に繰り入れ、そこから、基礎年金として支出される。
2020年度で、厚生年金から基礎年金への拠出額は19.4兆円だ。先にみた厚生年金の経常収入中の国庫・公経済負担約10.1兆円は、この約半分になる。
厚生年金収支の見通し
日本には、厚生年金のほかに、いくつかの公的年金制度がある。
支給額でみると、厚生年金が48.1兆円、国家公務員共済組合が3.0兆円、地方公務員共済組合が8.3兆円、私立学校教職員共済が0.9兆円、国民年金の国民年金勘定が3.7兆円、国民年金の基礎年金勘定が24.5兆円だ。
このように、厚生年金が圧倒的に大きい。そこで、以下では、厚生年金について考えることとする。なお、他の年金も、程度の差はあるが、同じような問題に直面している。
まず支給開始年齢が65歳のままであり、物価上昇率も実質賃金上昇率もゼロであるような経済を考える。
すると、給付は2020年度の48.1兆円から始まり、65歳以上人口の増加に伴って増加し、2040年度には2020年度の約1.083倍である52.1兆円となる。
他方で、経常収入の約3分の2は保険料だ(正確な比率は、2020年度で、32.0÷47.2=0.678)。これは、15〜64歳人口の減少に伴って、2020年度から2040年度にかけて、0.807倍に減少する。
経常収入の残りは国庫支出金などで、これは、65歳以上人口の増加に従って増加すると考えると、2020年度から2040年度にかけて1.083倍に増加する。
したがって、経常収入全体としては、2020年度の47.2兆円から2040年度までの間に0.678×0.807+ 0.322×1.083=0.896倍になって、42.3兆円となる。
国庫支出金を含めても、なお厚生年金の経常収入は、20年後には1割以上減少するのだ。