非正規の増加と「年収300万円の壁」

日本における、(1)バブル崩壊と経済不況は、雇用や所得の「格差」を生んだとされます。とくに’99年に労働者派遣法が改正されたことで、’00年代以降は男性でも「非正規(雇用)」が急増しました。’03年には、適齢期(25〜34歳)男性の非正規割合が約1割に達し、その後は近年(’20年)まで、例年15%前後で推移しています(図表7)。

国が貧乏になっても変わらない日本女性の「上昇婚志向」…結婚相手に求める最低年収「400万」は平均年収を上回る_3
図表7 若年男女・非正規雇用割合(推移)。『恋愛結婚の終焉』(光文社新書)

これら「正規」「非正規」の区分が、所得格差を増大させたことも明らかでしょう。

厚労省の調査を基に、女性も含めた「所得格差」の推移を見ると、格差を示す指標「ジニ係数(当初所得)」は、’80年代初頭の0.35が、’90年代後半に0.44まで上昇し、非正規雇用が一般化した’02年以降、0.50〜0.57の間で推移しています(同「所得再分配調査」)。

具体的な月収額の違いも、月収分布を加味した(月収の「真ん中」を示す)「中央値」を見ると明らかです。

’22年時点で、正規が約31万円、非正規が約21万円と、両者の間には月約10万円の開きが生じています(同厚生労働省「賃金構造基本統計調査」)。単純計算で、その差は年間約120万円。

後者にはいわゆる「130万円の壁(社会保険において配偶者扶養に入れるか否かの境目)」を超えないように働く主婦層も含まれますが、その分を差し引いても、決して無視できない開き幅でしょう。

こうしたなか、男性では非正規や低所得の人ほど「結婚しない(できない)」とされるのは、多くの皆さんがご存じの通りです。男性の婚活市場には、いまも「年収300万円の壁」が厳然と横たわっており、適齢期の直後、35〜39歳の男性では、年収300万未満と年収300〜499万円の比較で、既婚率が2倍近く(35.3%/65.2%)も違うのです(’22年内閣府「結婚と家族をめぐる基礎データ」)。

また、同年齢男性の「正規・非正規」の比較でも、正規で未婚率が約2割に留まるのに対し、非正規では約7割と、5割近く開きがあります(’19年「賃金構造基本統計調査」ほか)。