【ロボティクス】名医の手腕を再現するAI医療ロボット
デバイス面においては、ロボットがますます進化するでしょう。そもそも人の手は、どうしても多少震えたり、ブレる性質があります。ロボットがカバーすることで、より精度の高い手術を実現します。
ダヴィンチは特に有名で、導入している医療機関は世界中に広がり、世界での症例数は、1年あたり100万以上とも言われています。日本でも導入している医療機関が多く、国内での台数も570以上だそうです。
さらに、ここから先の未来では、ダヴィンチのような手術サポートロボットに、AIが実装されていきます。ダヴィンチで手術を進めながら、体内や患部の様子、詳細をカメラで撮影する。その画像を瞬時にAIが解析することで、アシスタント的に医師に助言を伝えるような世界です。
ディープラーニングで学習を施したAIモデルを使えば、人間の目では到底認識できないような各種疾患を、画像解析により検出できるでしょう。たとえば現在でも、胸部X線画像から病気を自動的に検出するための深層学習モデルが出てきています。
検出可能な疾患は、肺炎、肺がんなどの病変や骨折といった異常であり、ベテランの放射線科医でも難しい、X線画像からの適切な診断が高精度でできることが確認されています。
また、先にも紹介したロボ グローバルのダニエラ・ラス教授の発表でも、機械学習システムにより、医療業界では手術の映像をAIが分析することで、血管が破裂する可能性を示すような、非常に小さな兆候を判別・指摘することができ、事前通知を外科医に与えれば、手術の品質が格段に向上する、と述べられています。
手術も含め、AIが医療現場に浸透すれば、医師は簡単でルーティン的な業務はAIに任せ、難しいオペの部分に集中したり、より高度な業務に励むことができます。
実際、単純な縫合であれば、ロボットが自動でオペするようなことも将来的には可能になるでしょう。
一方で、特に難しいオペに向かう名医は、次から次へと変わる目の前の状況、患者のバイタルなどを多角的にこれまでの経験から判断して、指示はもちろん自らも手を動かしています。
そしてその情報の多くを、目から得ています。また医師一人ひとり、オペのスタイルや流れも異なります。
そのため、AIがデータを学習したとしても、ましてやデータにない状況に遭遇するケースもあるでしょうから、現時点では実際にAIロボットが手術を行うのは、画像診断と同様、簡単な作業に限られると考えています。
ある意味、自動的に淡々と行うような、術後の縫合などです。自動運転の現在の状況に似ている要素があります。
ただし、これは現時点での予測ですから、この先テクノロジーがさらに進化すれば、すでにこの世を去ってしまった名医の技術をAIが学習し、ロボットに再現してもらう夢のような未来の実現も、十分あり得ると思います。
多忙かつ高度な判断が必要な緊急治療室などにおいて、人間を的確にサポートし、負荷を軽減し、最善のアウトプットを行うことに貢献するような、AIアシスタントもあり得るでしょう。
一方で、より多くのデータを学習させることで、人間とのコミュニケーションの質なども含め、高めることができる可能性があります。すべての医師が、患者の意思を汲み取り、適切な言葉をかけるというコミュニケーションが上手なわけではありません。AIの方がコミュニケーションの満足度が高い、という事例さえあります。
また、知識豊富なメンターやコーチがいる場合、人間は自信を持って仕事ができるため、まさに私が予測した名医の再現に近い、熟練のデジタルメンターとしてのAIアシスタントも考えられます。