とあるホームレスの末路
【孝弘の遍歴】
六十代の孝弘は、数年前からホームレスをしている。NPOのスタッフが聞いたところによれば、孝弘は若い頃から職を転々として、長くても二年ぐらいしかもたなかったそうだ。原因は人間関係でトラブルを起こしてしまうことにあった。
孝弘は些細なことでカッと頭に血が上ってしまう性格で、一日に一度は怒鳴り散らすことがある。そのため仕事場で必ず誰かと衝突し、職場にいづらくなってしまうのだ。
同じことは女性関係にも当てはまった。女性と付き合っても、意見の食い違いがあると、感情的になって手を上げてしまう。そのため、女性との交際が三カ月以上つづいたためしがなく、結婚もしたことがなかった。
孝弘がホームレスになったのもこの性格が災いしていた。若いうちは体力があるから、多少厄介な性格でも雇ってもらえるが、年を取れば煙たがられる。そうしているうちに貯金が底を突き、ホームレスに身を落としたのだ。
NPOスタッフは次のように語っていた。
「孝弘さんはおそらく精神的に何かしらの疾患を抱えているんだと思います。だから人間関係がうまくいかない。こういうホームレスは結構いて、路上で暮らすようになった後も人間関係を自分から壊してしまうんです」
安定した生活を手に入れるには、職場においても、プライベートにおいても、人間関係を安定させる必要がある。それができれば仕事を失わずに済むし、何かあった時に助けてもらえる。逆にいえば、それができないタイプの人は、ホームレスに陥りやすいのだ。