日本で育ってきたのに、外見で日本人として判断されない葛藤。
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──嵐莉菜さんはこの映画にどうやって巡り合ったのでしょうか?
嵐「事務所から、こういうオーディションがあると連絡を受けました。元々演技には興味があって、いつかお芝居ができたらいいなと思っていたんです。サーリャの役柄の設定を知ったとき、すごく縁を感じ、『ぜひともやりたいな』とオーディションに挑みました」
──川和田監督が執筆された脚本を読んで、最も深くアクセスできたサーリャの状況は?
嵐「私は日本で育ってきて、日本人と言いたいのに、『日本人です』と言っていいのかわからないと思ってきました。外見から日本人として見てもらえない葛藤が幼少期からあったので、そういう感情が重なって、この役を演じたいと思いました」
──サーリャの親戚役でイラン出身のサヘル・ローズさんが出演されていますが、サヘルさんは私の息子が小学校の時、NHKの「課外授業 ようこそ先輩」の収録で来られて、外見が一般的な日本人と違うことから、中学時代の虐めなどの話をされて、当時消化できない感情を持ちました。おふたりは様々なルーツを持つ日本人ですが、サヘルさんと同じような体験はありましたか?
川和田「そうですね。疎外感や異物感はありましたし、日常的にそれをに気がつく、いろんな言葉に出会いました。例えば『日本語上手ですね』とか『どこから来たんですか』。そういう言葉に触れるたびに、日本で生まれ育ってきても、日本人だと思われないから、こういう質問を受けるんだなと思いますね」
嵐「私も『どこから来たの?』って言われると、日本が母国と思っているのに、そう思ってはいけない感覚になることがありました。今は地毛なんですけど、幼少期から黒髪に憧れていたり周りの子に出来るだけ合わせようとしていました。ただ、今はこの外見だからこそ頼まれる、任せてもらうお仕事があるので、『自分のアイデンティティとして大事にしよう』と思っています」
クルドの女子高生と、莉菜さん。高校生として過ごすうえでは同じ。
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──川和田監督は、はじめクルド人の方をメインキャストに考えていたそうですが、難民申請者の将来の不利益になることを避けて断念されたと伺いました。主役を演じた嵐さんに託すものは大きかったのではないでしょうか?
川和田「莉菜さんには、圧はあまりかけたくなかったです。もちろん置かれている環境や、抱えている苦しさは比べようがないですけど、でも、高校生として学校で起きた出来事や好きなアイドルなど、そういうことは同じで。違うけど同じ、ということを大切にしたいと思っていました。
もちろん、当事者として何を不安に思っていて、日々どういう生活を送っているかに莉菜さんが知ることは大切だと思っていたので、クルドの高校生の女の子とお話をして、打ち解けてもいましたし、その方のお家で食事もしました。莉菜さんが演じる上で引き出しにいれてもらうようなつもりで準備しました」
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──映画の中では、サーリャのお父さんはクルド人としてのカルチャーや因習を非常に大切にしていて、日本で過ごす中で培われた面を持つサーリャとの衝突の一因にもなっていましたが、演じる上で大切にした要素は?
嵐「私がお話を聞いたクルド人の女子高生は、すごく素敵な女の子でした。お家に行ったとき、私も普段から母親の料理を手伝いますが、それとは比べものにならないくらい料理から何から家事を手伝っていて、そこに文化の違いを感じました。お家では彼女のお父さんが楽器を弾いてくれて、みんなで一緒に盛り上がったりして。そういう姿を見て、彼女はクルドの文化と日本の文化の両方、とても上手くバランスを保っているように感じました。きっと、家と学校で使い分けているんだろうなと思います。そこに、新しい発見がありました」