真理を味方につけておけば、怖いものはない

ただひとつ言えることは、私は、「常識」を規範にものを考えたり、発言したことはありません。戦前・戦中と戦後では、一夜にして百八十度変わってしまったように、常識とは、絶対的なものではないからです。時代時代の権力者や勢力バランス、風潮に左右されやすい、常識とは一時的な流行のようなものと、言ってしまってもいいかもしれません。

その代わり私は、長いスパンで日本や世界を見渡し、歴史を勉強してその中にある「真理」をつかみとり、その視点から意見を言うようにしています。真理とは、時代を超越した永久不変なものであり、だからこそ人が、規範とするべきものだからです。

かつてビジュアル系でデビューしたときも、まずは日本のファッション史をひもときました。すると、元禄時代のお小姓たちは、女性向けの華やかな柄の反物を男仕立てにした振袖をあつらえ、着ていたとか。そこで私はピンクや紫など鮮やかな色のものや、レースやシルクなど女性向けの素材をふんだんにつかって、服を作りました。パンタロンの裾からフリルをのぞかせたり、毛皮のトリミングをつけたり……。

シャンソンの歌詞を翻訳したときも、一般庶民に親しみやすい口語体にしました。当時日本では、上流社会のご婦人たちが愛好していたため、シャンソンの歌詞は気取ったものでしたが、フランスの歴史を見れば、私のほうが正しいのは一目瞭然。物事の本質をとらえ、常識よりも真理を味方につけておけば、怖いものはなにもないのです。

年齢や肩書き、性別など、すべてのボーダーを忘れておしまいなさい。年齢は数字にすぎませんし、性別もどちらだって同じこと。収入や肩書き、職種などは、その人間の本質とはまったく関係ありません。

めざすのは、ただひとつ、よい人間であること。

人に迷惑をかけず、笑顔で一生懸命に生きるよい人間には、すべてが許されるべきです。何をやっても、どんな恰好をしても、責任さえ取れるのなら、あなたは自由なのです。


写真/御堂義乘

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ボーダーレスで生きましょう 今こそ読みたい美輪明宏の言葉 #3_a

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