キューブリック版への不満から自ら製作するも…
ドラマ『シャイニング』(1997)
キューブリックの『シャイニング』を許せなかったキングは、その怒り(?)を収めるためにTVのミニシリーズを作ることに。キングが共同製作、脚本、さらにはカメオ出演までするという入魂っぷり。監督を務めたのはキング御用達の監督、TVシリーズ『ザ・スタンド』(1994)や『スリープウォーカーズ』(1992)等を手掛けたミック・ギャリスなのだから徹底している。
キングは自分の原作通りに作ったのだが、残念ながら怖くない上におもしろくもない。明らかにキューブリック版のほうが怖いしおもしろいのだ。
結果として、小説と映像のフォーマットの違い、それを意識して撮るべきだということを見せつけるような作品になってしまったが、見比べてみるのも一興だ。ただし、キング自身は本作に大変満足しているという。
自らメガホンを取りながらも惨敗
『地獄のデビル・トラック』(1986)
「私の小説が映画になると、ファンはこう言って見ないんだ。『またキングのクソみたいな映画化だろ』って」
自作の映画化に満足するものが少ないせいなのか、こう毒づいていたキング。
そんな彼が脚本のみならずメガホンまで取り、図らずもその言葉を証明してしまったのが短編「トラック」の映画化『地獄のデビル・トラック』だ。
原作は、突然トラックが勝手に暴れだし、人々がドライブインから出られなくなるというだけの話だが、映画版ではそれを地球に接近した彗星のせいでマシンが異常をきたし、人間を襲い始めるという展開に。
キング自身が大好きなB級俗悪映画を目指して作り、実際そうなってはいるのだが、評論家の評判はさておき、興行的にも惨敗をきしてしまった。
ちなみに同時期にロブ・ライナー監督の『スタンド・バイ・ミー』(1986)が公開され、こちらはキング原作映画の最高峰とすべての面で賞賛を受け大ヒット。キング自身も大絶賛している。
文/渡辺麻紀