「頭がいいと、釣り合う男性って…」
「景色と一緒」
シェリーさんは、並びのいびつな歯を見せて笑った。面白い表現をする人だ。
「顔いいねという程度。肌きれいね、目きれいだね、そんなもん」
そのかっこいい容姿のそんなもんに抱きしめられたいと思ったことはないのか……?
シェリーさんは、私の質問を切って、
「いやぁ。思わない」
笑顔を苦笑いに変えた。それでは、相手が何だったらシェリーさんは「オチる」のだろうか。たとえば歌の上手な人に弱いとか、笑顔の美しい人に弱いとか、きれいな声の人に惹かれるとか……。人は得てして弱点というものを持っている。
すると今回は即答ではなく、一瞬だが考えてから、シェリーさんは顎に手をやり、
「ないね。考えたことない」
と言って、軽く笑った。そういう人もいるのかと、私は先入観を持っていた自分を反省した。
「そこまで興味が行かない。やりたいことがいっぱいあって、誰かとつきあうっていうこと自体が自分のなかに入っていないの。これは、海外へ遊びに行きたいという欲のない人や、お肉を食べない人と同じ」
また肉を例に出して、私を納得させようとする。しかし人と、肉や旅行とは違う。人に対しても、本当にそう思えてしまうものなのだろうか。いったいどういう人なら、シェリーさんは存在する「人」として認めることができるのだろう……。私はインタビューをしながら思い巡らしていて、ハタッと閃いた。
頭脳に違いない! そこで、
「それだけ頭がいいと、釣り合う男性って、なかなかいませんよね?」
と、聞いてみた。はたして、
「それもありますね」
シェリーさんは素直に認めた。どうやらシェリーさんより賢い男性でないと、つきあう基準にも満たないようだ。
「頭がいい人ねぇ……」
シェリーさんは苦々しくつぶやいたきり、宙を見ている。いったい、最低どれくらいのレベルの人だったら、釣り合うとみなしてくれるのだろうか。