竹島や慰安婦は「異論の余地なし」

「自尊心」という言葉を好んで使う韓国人は、とりわけプライドの高い民族だと感じる。日本統治によって国が消滅し、自尊心を奪われた。第2次世界大戦後の独立も自らの手で勝ち取ったものではなく、外国の手を借りて解放されたものだ。

そんな複雑な思い=「恨(ハン)」が、48年の韓国建国以降、国民に国家プライドと自尊心を植えつける教育に反映されているようだ。

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東京都内の高校で教鞭をとる女性は高校時代に悲しい体験をした。欧州の留学先である日、仲の良かった韓国人のクラスメート全員から突然、無視されたのだ。島根県の竹島(韓国名・独島)についてどう思うかを聞かれ、「日本固有の領土」と素直に答えたためだった。

韓国の思想に詳しい小倉紀蔵京都大学教授は著書『韓国の行動原理』(PHP新書)に次のように記している。

「竹島(独島)問題や慰安婦問題に関して、韓国のなかで『異論の余地なく』日本が悪い、という意見が全面的に共有されている。歴史的な事実を真摯に分析してみれば多様な『異論』が並立されるべきである問題に関して、『異論の余地なく』特定の勢力に非がある、と考えることは、客観的にいって思考が停止していることを意味している」

冒頭の韓国人学生を日本に引率した政府関係者から「韓国の大学生は慰安婦や徴用工問題を歴史問題というよりも人権問題としてとらえている」と教わった。生まれた頃には同国の高度成長期はすでに終わっていた。競争と格差社会でずっと生きてきた若者たちは自分たちを社会と教育制度の「被害者」と位置づける。社会正義や人権には特に敏感だ。

日本統治時代を体験し今も存命中の人々が残る韓国で日本の植民地支配はけっして「過去」ではなく、今なお続く現代史としてとらえられる。

日本が韓国を侵略・併合した重い事実は否定できない。朝鮮半島出身者に対する日本人の差別的な言動も歴史的事実だ。

一方で、戦前、戦中の日本人はすべて悪人で残忍だったという教えも誤っている。2004年に筆者が韓国中部の忠清道で出会い、困っているところを助けてくれた高齢男性の2人は筆者の前で小学校時代の日本人恩師を懐かしみ、日本の童謡を口ずさんだ。当時、終戦から60年近くたってもさびない日本語に心が痛んだが、「加害者日本、被害者韓国」であらゆる史実を規定してしまえば、そんなワンシーンも消されてしまう。