バレーボールをやめようと思っていた
――共栄学園を卒業後、揃って現在所属する明海大学に進学。大学でも、二刀流で行こうというのは最初から決めていたんですか。
衣笠 私はそうです。インドアとビーチ、両方やらせていただけるというお話をいただいたので、明海大学に決めました。
菊地 私は…バレーボールは高校で卒業しようと思っていて。
――それは驚きです。
菊地 でも、のあが、ビーチもできる明海大学に行くと聞いて、ということは、私も明海大学に行ったら、また、のあとビーチバレーができるよねと2人で話して。その時点で私の気持ちは、インドアじゃなく完全にビーチバレーの方に傾いていました。
――大学では、2021年のジャパンカレッジで4位入賞。2022年は決勝の舞台にたどり着き、準優勝。その活躍が認められ、ブラジルで行われた世界大学選手権のメンバーにも選ばれました。
衣笠 初めてのブラジル、初めての世界大会は衝撃だらけでした。
――どういうことでしょう?
菊地 大会前の合宿で、はじめてビーチバレーのコーチに本格的に指導をしていただいたんですが、足の運び方や体の使い方など、教えていただくことのひとつひとつが、私たちが知らなかったことばかりで。技術・経験・知識の全て欠けていることを思い知らされたました。
衣笠 結果は19位でしたが、海外の選手と試合をするのがとにかく楽しくて。もう一度世界の舞台に立ちたい。この先もビーチバレーを続けたいというある種、覚悟のようなものが生まれたのもこのときです。
――お2人にとってはプラスになる、いい衝撃です。
衣笠 ビーチで水着は当たり前ですが、ブラジルでは街を歩いている人たちもフツーに水着姿で歩いていて。あの光景もちょっとした衝撃でした(笑)。
菊地 その後、日本に帰る飛行機の中で味わったのが、海外遠征一番の衝撃でした。
――何があったんですか。
菊地 飛行機に乗っている時間は、全部で25時間くらいなんですが、空港で過ごすトランジットも合わせると、50時間を超えていて。試合の緊張感をはじめ、いろんな疲れが溜まっていたと思うんですが、最後ロサンゼルスから日本に帰る飛行機に乗った途端、気持ちが悪くなってしまって。
衣笠 最初にまゆが真っ青な顔になって。そのまゆの世話をしているうちに、だんだん、私も気持ち悪くなってきて。2人で代わりばんこにトイレに駆け込んでいました(苦)。
菊地 あと11時間だから頑張ろう。だめだ、まだ10時間もある。どうしよう? と2人とも泣きそうになりながら帰りの飛行機に乗っていました。緊張や疲れってこんなかたちで出るんだなと初めて知りました(笑)。
のあまゆペア、ロサンゼルスオリンピックへの道のり はこちらから
取材・文/工藤晋
写真/松木宏祐
スタイリング/木村美希子